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百年河清の恋心

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もう一人の俺の友人。中学生から付き合いである折原臨也は、今日はまだその姿を見せていない。珍しく。だいたい週に3回以上は勃発する臨也との追いかけっこの後は二人とも酷い傷だらけになる。特に静雄は、身体の傷はまあ置いておいて、服の被害が深刻になっている。臨也は打撲、捻挫、酷い場合は骨折までいく。まあ、本人もケロリと翌日には登校してくるし、心配はしていない。あの臨也に心配などとするだけ無駄というものだ。

「・・終わりか?」

少し考え事をしていると、静雄が止まったまま動かない手に気付いたらしい。恐る恐る目を開けて、尋ねる静雄は子供っぽかった。

「ああ、ごめんごめん。これでおしまい。」

怒っていない時の静雄の声は穏やかで、静かなもので、名前負けはしていないと勝手に思っている。自然な動作でポンポンと子供にするように金髪の頭に手を置いた。常ならば、振り払われる手も、なぜか手当て後の時だけは許されていた。中学の頃から染め続けている髪は痛んでパサパサしているが、感触は割と好きだ。おとなしく撫でられ続けている静雄も面白くて、俺はしばらくそのまま撫で続けていた。結構楽しい。
ひとしきり撫で、満足すると、救急箱の片づけを始める。自分の頭から離れる僕の手を追う静雄の目はどことなく寂しそうだった。こういう時は何故か照れないんだね君は。

「あー、腹減った。っくそ、あいつらのせいで昼飯食い損ねた。」
「ああ、そうだ。だろうと思ったから持ってきてあげたよ。はい。」

虚しく空を見上げる静雄に教室から持ってきた彼のカバンを渡す。受け取った静雄はきょとんと幼い顔でカバンと俺とを交互に見た。来神高校の裏番と恐れられ始めている彼のこういうところどころ子供っぽいところが俺はなかなか気に入っている。可愛いから。

「・・その、ありがとな新羅。」
「うん、どういたしまして。」

静雄は、にっと昔と変わらないけど昔はなかなか見られなかった笑顔を浮かべた。嘘の無い素直な、きれいな笑顔だと思う。
ただ、俺にとっては、ただそれだけの笑顔。

心地のいい風が吹く。黒バイクに乗った彼女もこの風を感じているのだろうか。

またツキリと小さな幻の痛みが俺の胸を刺した。





俺の数少ない貴重な友人は、絶対に叶わない恋をしている。
全くの無自覚で、本人にすら気付いてもらえていない可哀相なその恋心は、けれど俺にはなんの関係も無く、消えていく運命にある。
少し不憫な気もするけれど、彼がこうしてきれいに笑っているから、やっぱり、俺にとってはどうでもいいことでしかなかった。
作品名:百年河清の恋心 作家名:がーと