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貴方が汚したこの世界は美しいか?

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からっぽのなかみにはなにをつめようか?







「変わり映えの無い日常がいいか・・・それとも胸が高鳴るような非日常がいいかな。あるいは、君を殺して詰めてしまおうか?」





ハハハッと人影は声を上げて笑った。





酷く、奇妙な気分であった。
ボウと月を背に浮かび上がる人影は光を放つこともなく、その存在を知らしめる事もなく、ただうっすらと其処にあるだけだった。
只今の時刻、午前零時。
表通りすら人も疎らな今の時刻では裏通りの路地では文字通り人っ子一人居なかった。
そんな高層ビルの森の中の、冷たいコンクリートビルの屋上に彼は居た。


(いつもの人が好きだ愛してると語る狂喜的なあの笑顔のままで)

(僕が愛したままの姿で)



そこに、あったのだ。




それを僕が人事の様に傍観して見ていられるのは、単にここが夢の世界だと理解しているからで。


(ためしに頬を抓ってみても、そこは麻酔でもかけられたかのように何も感じない)


友人曰く5秒ごとに信念が変わる様な予測不可能な彼と比べると、所詮は僕の記憶の彼という人物であり、偽者だ。
(そうだ、偽者だ)

(だから、この胸の高鳴りもきっとー)




「全ては幻だ、ねえそうでしょう?臨也さん」





「さあ、」
(どうでしょう?)



(悪魔がそう囁く、にいと唇は弧を描いた)



(その、表情に、瞳に宿した光に狂喜を見たんです)
(そしてその貴方の密やかな笑みは今も僕の残像の奥に氷てついたまま、)





貴方が汚したこの世界は美しいか?
(答えは、No)
(だって貴方に汚された世界は美という幻想すら纏う暇無く自我を失い、発狂してしまうだろうから)