スペ初(続き)
ジョット、俺はてめぇの為に何ができる?
~友情、優しさ、親愛~
スペードがジョットの元を去ってから、ずっとジョットは部屋で塞ぎ込んでいる。
ジョットの事を最も心配しているのは、幼なじみのGであった。
(アイツが去って数週間か…)
Gはジョットの為に食事を運び、一人でジョットの分の仕事をしたりしていた。
(俺がジョットの為にできる事、か…)
ジョットの為に何が出来るのか、それがGの悩みだった。
幼なじみとして、何ができるのか。
(…アイツとスペードの為を一番に考えるには、この方法しかねぇな。
だが、右腕の俺が言えるような事じゃねぇ…)
Gは三日程考えていた。
幼なじみとしてか、右腕としてか。
…どっちがジョットの為になるのか。
「…ジョット。ちょっといいか?」
Gは覚悟を決め、ジョットの部屋へ行った。
「…なんだ。」
感情の無い声。
ジョットは大分やつれていた。
「ボンゴレⅠ世の肩書きを捨てちまぇ。」
「何?」
「今の俺は、幼なじみとしての俺だ。
右腕としてじゃねぇ。」
「いいのか…?」
「どうせ寄せ集めの守護者達だ。何もいわねぇだろうよ。」
「ふっ…」
ジョットは微笑んだ。
目をつぶって。
「正式にボンゴレⅡ世にボスの座を継承する。
…てめぇは自由になれんだぜ?
スペードとも自由だ。」
「そうだな…。
お前は雨月と自由になれるがな。」
「なっ…て、てめ、
何で知ってるんだよ!?」
「幼なじみの事なら、大体分かる。」
「へっ、言ってろ!」
そういって、Gは部屋を出て行こうとした。
「G様!ジョット様!」
血相を変えたGの部下が走って部屋に入ってきた。
「…うるせぇ。何があった?」
「すみません…。
あ、あの、スペード様が見つかりました!!」
「何!?」
珍しくジョットが動揺した。
「…決まりだな。
おいてめぇ、今からボンゴレⅡ世のアジトに行くから部下を呼んで来い。」
「はいっ」
「…G。」
「礼はいらねぇぜ?
幼なじみとして、当然の事をやったまでだ。」
「お前らしいな。」
「へっ。んじゃ後で。
スペードを呼ぶから、心の準備をしておけよ?」
「あぁ…」
そういって、Gは部屋から出ていった。
「スペード…」
ジョットは愛しい人の名を呟いた。
「ジョット…!」
聞こえてきた、懐かしい声。
その姿は紛れも無い、スペードだった。
「スペード…何処にいたのだ、
心配したでは無いか…」
「会えて嬉しいです、ジョット。…Gから聞きましたが、Ⅱ世にボスの座を譲るというのは本当ですか?」
「本当だ。Gの為にもなるしな。」
「そうですか…。」
スペードは静かにジョットを抱きしめた。
「ずっとこうしたかった…。
この数週間、僕は後悔と貴方への思い出で押し潰られそうになりました…。」
「スペード…」
「泣かないで下さい、ジョット…。
僕は貴方の泣き顔は見たくない…」
「…お前は私の笑顔が好きだったな。
だが今だけは…」
「ジョット…」
二人は無言で涙を流した。
お互いの存在を確かめるように、いつまでも抱きしめあった。
「好きです、ジョット…。
愛してますよ…」
「わかっている。
私もお前を愛しているぞ。」
お互いに愛の言葉を交わしながら、見つめ合いキスをした。
「戻ってきてくれたこと、礼を言うぞ…」
「いえ、僕を迎え入れていただきありがとうございます…。」
二人は微笑みあった。
その時…
「話は済んだか?
…てめぇらの家も用意してある。」
「G、頼みがある。」
「…何だ?」
「私は幼なじみとして、お前を信頼している。
お前となるべく、離れたくない。」
「はっ、俺の幼なじみは昔から
ワガママらしいな…
いいぜ、お前の家の近くに住んでやるよ。
…雨月もいるがな。」
「僕も賛成です。
Gがいれば何かと安心ですし…」
「…スペード。これだけは言っておくぜ。
ジョットを泣かせるな。
アイツを傷つける事があれば、
いくらお前でも許さねぇ。」
「わかっていますよ、G」
「お前は裏切り者の名を背負ってんだ。
何かあったら俺に言えよ?」
「わかりました。
ありがとうございます…」
「スペード、G。
部下に荷物を片付けさせるから、そこをどけ。」
「それくらいてめぇでやれっ」
「まぁまぁ…。
Gも雨月の所へ行ってはどうです?
荷物もまとめなければならないでしょう?」
「そうだな。」
「あ、G殿!!
ここにいましたか、探したんですよ~…」
「何だ雨月?」
「荷造りが大体終わったので、
呼びに来たんですよ!」
「俺の荷物もか?」
「はい、大体は部下にやらせましたが…」
「てめぇら、部下を何だと思ってやがる…。」
Gは呆れ顔で雨月の元へ向かった。
「…変わりますね、ボンゴレ初代ファミリーの形が。」
「あぁ。…だが何代かした後に、同じような境遇のボンゴレファミリーが出来るだろう。
…十代目あたりに。」
「なぜ分かるのです?」
「…そんな気がしただけだ。」
「……なるほど。」
他愛もないスペードとジョットの会話。
ジョットはこれからも、愛する人と幼なじみに囲まれて暮らせる喜びを感じていた…
…fin
作品名:スペ初(続き) 作家名:獄寺百花@ついったん