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君、透明人間

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困ったな、と彼が呟く。
何が?と問えば、彼はいつもはしない、少し弱気の表情。眉尻を下げ、微笑む表情は凄く曖昧。
表情はそのままにして、彼はずっと言葉を並べてきた。


俺は、ナルシストなんてそんなんじゃない。ただ、君と出会って共に幼少を過ごして、背を越し越され、月日を共に過ごし。互いが色々な感情を持つようになり、己の道を見つけて進んで歩んで、己の立つべき場所を確保して。今後の事に夢を抱いていく。そして流れていく月日の中で、気付いた感情に俺は蓋をしなかった。その感情を大事に大事に、本当に大事にしてきた。いつか俺の言葉で、ちゃんとした形で伝えたいと思っていた。それこそ君とは兄弟の様に育った。もしかしたら、君にこの気持ちは拒否されるかもしれない。勿論そういう不安だって抱えてきた。でもね、カナダ。ううん、マシュー。俺は君の事が大好きなんだ。ね、マシュー。ラブとか、そういう意味だ。兄弟じゃないんだ。でも君が俺のこの感情を心から拒否するのであれば、これは聞かなかったことにしてくれ。俺は君との関係を失うのが、嫌なんだ。


それは、本当に彼らしくない告白だった。
彼ならば、もっと強引に、それこそ拒否なんて認めないといわんばかりに攻めてくるだろう。それが僕の知っている、彼だった。だからこそ戸惑った。だって、まさか、彼にこんな風に思われているとは思わなかった。それは恋愛対象としてではなく。こんなにも彼に弱気にさせてしまうほどに僕の存在が彼の中で大きくなっていた、という意味だ。
僕はいつだって、透明人間だったから。彼だって、僕に「あれ、居たの?」なんて言葉を平気で浴びせる。それを僕は半泣きになりながら、「居たよ、ちゃんと居たよ。」と言う。そんな日常ばかりだった。だからこそ。


だからこそ、僕は彼に恋心を抱かれていたと言うよりも、彼の中で僕がとても大きな存在になっていたという事の方が嬉しかった。恋愛感情なんて、僕にとっては二の次だったんだ。

作品名:君、透明人間 作家名:いとかた