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らん@島国・★☆
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novelistID. 3555
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ふしぎなはなし

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私が高校生の時の話だ。
学校と自宅が遠いため寮暮らしをしていたのだが、休日になるとたまに遊びに那覇へ出ることがあった。
だけど寮から那覇まで遠くバス代が往復で千円かかった。
高校生のときはお金が無くそれがつらかったので、那覇にある祖父の家へ泊まることも少なくなかった。
これはそんなある日の話だ。



夏になりきらない少し寒い日の頃だったと思う。
いつものように泊り込み、土日は遊んでから寮へ戻ろうと思って祖父の家の客間で眠っていた。
すると夜中に誰かが階段を上ってくる音がする。
私の眠っていたのが祖父の部屋のすぐ上で、階段がほぼ真下にあるような構造なので木製の階段が軋む音が夜は特によく響く。
同じく二階に部屋があるおじさんがトイレにでも起きたのだろうと夢現でぼんやり思っていた。
しばらくその音を聞いていたのだが、何かがおかしい。



ずっとその音が同じ場所でするのだ。
しかも軋み方がゆっくり体重をかけるときだけにする上る音だけが。

そして、同じ場所でするのに飛び降りるような音がしない。
そのことに気づいた瞬間、ぞっとした。
しかもおかしいのはそれだけではない。
二階まで響くほどの音に階下の祖父が起きる気配が無いのだ。
祖父は私が夜中にこっそり出かけようとするとどれだけ物音を立てずとも起きる神経質な人間なのに、だ。
恐くなり、布団をかぶるとこれは気のせいなのだと言い聞かせながらきつく目を閉じた。
そうしているうちに本当に眠ってしまい、あれは夢だったのだと思った。
次に母と一緒に泊まりにいったときはその音がしなかったからだ。
そういえば旧盆も近かったしだからだったのかもしれないとおもった。


だが、その次のとき私が一人でとまりに行くとまたその音がしたのだ。
しかも今度は前よりその音が上へ、つまり私のいる二階へ近づいて。
泊まるたびに近づいてきていつかこの部屋に来てしまうのではないかという想像に私は脅えて、その日はよく眠れなかったと思う。
音はいつしか止んでいたけれど。

だが、また違う日に那覇に行く用事ができて泊り込みになってしまいそうな気がした。
だから私は前に母と行った時は音がしなかったので他に人がいたら音がしないかもしれないと思った。
確証は無かったけれど、一人で聞くより恐くないだろうという打算もあった。
同じ寮生の友人を連れ出し、一緒に泊まることになった。
彼女ならなんどか一緒に泊まったこともあるし大丈夫だろうとも思ったのだ。


するとやはり音はしなかった。

安心して私は寝入ってしまったのだが、夜中にふと目がさめた。
その日は最初に音を聞いた日から随分立っていて熱帯夜だったので、蒸し暑さでだ。
電気も消し忘れていて、それが気になったというのもあったかもしれない。
消すついでに窓でも開けようかと思い起きると隣で寝ていた友人が目を見開いていた。
しかも顔色が悪い。
熱くて眠れなくて気分が悪くなったのだろうか。
驚いて「熱かった?ごめんね、電気消すね」というとその友人が「消さないほうが眠れる」と返した。
けれど顔色が悪かったので窓だけあけると少し冷たい空気が入ってきて、これで少しは眠りやすくなっただろうと思い、私は眠ってしまった。
何事も無かったことに安心して二人で祖父の家から出た。
すると、しばらくしてからずっと沈んでいた友人が口を開いた。


「見たよ」
その言葉に一瞬私は何を言っているのかわからず、気づいた瞬間立ち止まった。
熱いはずなのにカタカタと震えがとまらない。
「あんたの隣に立って、私を覗き込んでた」
私が目が覚めるまでずっと見つめ合っていたというのだ。
それを聞いたときの私も、彼女と同じ顔色になっていたのではないかと思う。




あれ以来あの音は聞いていない。