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みずき@ついったー廚
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novelistID. 4776
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【イザシズ】テスト投稿

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その狼はいかにも奇妙だった。
俺のような草食動物を見ても、ぴくりとも動かない。腹が減っていないのかとも思ったが、その目は本能でぎらつき、今にも噛みつかんばかりだ。やせ細った体は、それでもなお洗練された筋肉の美しさを映す。そして、何より奇妙だったのがそれの毛の色だった。それは、月の光を透かしたような、綺麗な金色をしていた。太陽ほど派手ではない。あれの光をもっともっと淡くして、本当に美しいところだけを残した、満月の色だ。


気がつけば、俺はそれに近づいていた。俺が近づいてもやはり動かないそれは、いつか人間の巣(「家」と人間は呼ぶらしい)で見たはくせい、と言うものに似ていた。しかし、風になびく毛の色艶と失われない瞳の輝きだけが、確かに存在する生を感じさせた。
食われたらどうしようなどと言う懸念ははじめから存在しなかった。食われる気などさらさらなかったし、万一襲われたとしてもその時はその時だと思っていた。俺だって、伊達に一匹で生きてきたわけではないのだと。


狼の足なら二つ程飛べば十分届くであろうところまで来たとき、予想外の声が降ってきた。

「こっちに来んな」

少年と青年の中間の声。苛立ちを存分に含ませた声に、ほんの少し心臓が跳ねて、歩を少し緩める。
「へぇ、喋れるんだ」
喉の奥でくつくつと笑うと、嫌そうな顔。
「うるせぇよ。喰われたくなかったらさっさといなくなれ」
低くうなり、牙をむく。尾を逆立てた威嚇の姿勢だ。しかし、身を低めて飛びかかる体勢を取らないことからして、これははったりだろう。今までたくさんのものを見てきたのだ、そのくらいのことは分かった。ただ、空腹を感じているはずなのに俺を食べようとしないその意図だけがよく分からない。肉食動物はそれらしく無様に肉を貪っていればいいのだ。草食動物が侘びしく草を食むように。


「ハハ、変な毛の色をしてるから分かりにくいけど、君狼だよね?普通逆じゃない?食べるから近づいて来いって思うよねぇ」
嘲笑混じりの言葉が出る。
「お前には言われたくねぇ」
狼は明後日の方向を向いてぽつりと言った。
「毛の色の話?黒い兎なんてそこまで珍しくないと思うけど」
「……そんな夜の空みたいに真っ黒な奴、お前が初めてだ」