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フレンドボーイ42
フレンドボーイ42
novelistID. 608
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【完全読み切り】會

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短パンをはいて今日も外に出る。彼は、102番道路で待ち合わせをしている。そのトレーナーについて少しだけ語ろう。最近、自分の町に新たなジムリーダーが赴任した。その人の名はセンリ。彼はノーマル使いだったが、下手な小手先のテクニックなんかじゃない、もっとすごい技術と、それを飾るパワーを持ち合わせていた。彼に挑んだトレーナーはみんな負けて帰ってくる。しかしそんな彼でさえ勝てなかったトレーナーがいる。
 それは、自分自身の息子だった。
 自分自身の息子に負けるわけには行かないと言う一種の信念から、他のトレーナーを相手取る時よりも、その目には気合が感じられ、とんでもなコンボとパワーのオンパレードを繰り広げる、強さを追い求める男、センリ。しかし、相手である自分の息子は、その時すでに、父親よりもすごい勢いであった。切れ目の入った竹を、真っ二つに裂くほどに。
 その姿を、その少年がこの地方に来て早いうちに友人となった自分は目の前で見た。最初に自分と戦った時、彼のポケモンは種類も少ないことは言うまでもなく、まず自分とそんなに大差なかった。しかし、目の前でジュカインは風を切り、バシャーモは地を引き裂くように蹴り上げ、ラグラージは全てを震わせ、およそ子供トレーナー、それも10歳児とは思えなかった。過去にそんな例はいくらでも枚挙にいとまがないとは言うが、しかし多くは伝説であり、現代に入ってそのような例はまだ4人ほどしか確認されていない。
 いま、短パン小僧のカズキは、そのトレーナー、ユウキを待っていた。自分の力を試すために。そして、少し待っていると、彼はやってきた。
 「遅れてごめん、カズキくん」
 
 彼は持っていたバシャーモとジュプトルで、カズキのポケモンをすべて軽くひねりつぶしてしまった。ヤルキモノ・グラエナ・マッスグマはおろか、飛行タイプであるオオスバメでさえ、彼のポケモンの前には万策尽きた、という印象である。ポケモンを途中で変えたのは彼なりの気遣いなのかもしれない。さすがに一匹で4タテされてしまっては、こちらとしては面目ないということを知っている。
 「はぁ…やっぱりかなわないや、今のユウキ君には」
 「何を言うのさ、急に」
 「だって初めて会った時のことを覚えているだろう?あのころは僕も君も同じくらいの腕前だったじゃないか」
 「そうだったね…。でも、カズキくんもすごく強いでしょ?周りのトレーナーには負けないんじゃない?」
 「内輪で強くたってしょうがないよ。もっといろいろな所に行きたいな…僕も旅する事ができたらな」
 「まあ、確かに楽しいからね。でも、旅に出て打ちひしがれることもあったよ」
 「へえ、ユウキくんが?」
 「僕は絶対強者じゃないよ」
 それからユウキの話を聞いていた。マグマ・アクア両団の野望を阻止するために東奔西走した話。レックウザを呼びに空気の薄い高い塔に登った話。ポケモンリーグチャンピオンに久々に挑みに行ったらチャンピオンが変わっていて驚いた話。そのどれもが面白く、そして、少年の冒険としては危ないけれども楽しいものだった。自分は父親・母親には旅に出ることを全く許されていない。いってみたい。遠くの都会や、火山町や海辺の町。舗装されていない自然の町に、宇宙センター。しかし今は102番道路にしかいることができない。
 「ユウキくんはまた旅に出るの?」
 「うん。もうちょっとしたらね」
 「そうか…」
 「だから、もしかしたらもう会えないかもよ」
 「怖い事いうなって。絶対ユウキくんなら大丈夫だよ」

 あれから三年が過ぎた。彼は行方不明になっている。彼のことだ、きっとどこかで無事にやっているだろう。しかし、自分にも、そしてほかの人にも全く連絡はない。きっと彼なら、いつかは僕の目の前に姿を現すはずさ。彼はそう思いながら、いま、外の世界に足を踏み出そうとしていた。