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轍 きょうこ
轍 きょうこ
novelistID. 1480
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向ける矛先の形

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百目鬼は酷い奴だ。
それは四月一日にとって、ひとつの不文律。
だからその日もいつもと同じように、いつもと変わらず百目鬼を非難する言葉を喚いていた。ただいつもと違ったのは、いつもは仕方ない子という顔で黙って話を聞いているだけの侑子が、溜息をひとつついたことだ。
「四月一日ってばまーたそんなこと言ってるの?」
「いくらだって言いますよ! だってひどいやつなんですから。俺の前でひまわりちゃんと仲良くして!」
「ひまわりちゃんも百目鬼君と仲良くしてるんでしょ?」
「そ、それは、まあ…」
「だったら百目鬼君だけ責めるのは不平等よ。ちゃんとひまわりちゃんにも怒らなくちゃ」
「ひ、ひまわりちゃんはいいんです!」
「どうして?」
頬杖をつき四月一日を覗く瞳は深い。心の奥底まで見透かすような一瞥と、どこか鋭い問いに四月一日は怯んだ。
「どうして百目鬼君はダメでひまわりちゃんはいいの?」
「ひまわりちゃんだからですよ!」
「ひまわりちゃんは可愛いから?」
「そうです!!」
四月一日は大きな動作をもって頷く。信仰に妄信する子どものような仕草だったが侑子は手をゆるめてやったりしなかった。
「百目鬼君もかっこいいじゃない?」
声もなく表情で伝えてくる四月一日の表情は面白いくらい分かりやすい。何言ってんだこの人と如実に語る、その裏にかすかにある焦燥。
「あ、あんな奴のどこがかっこいいって言うんですか?!」
「かっこいいわよねー」
「おう、少なくとも四月一日よりはかっこいいぞ!」
ぴょんと飛び跳ねてモコナが主張する。
あんまりきっぱりとした言葉に反論しようとする四月一日より先に丸い物体は叫んだ。
「百目鬼は逃げてないからな!」
「…え?」
予想外の言葉に四月一日は目を瞠る。
「侑子もそう思うだろ?」
「ええ。とても素直ね、四月一日と違って」
後ろでマルとモロが「にげてるーわたぬきにげてるー」とくるくるまわってダンスを踊っていたが、四月一日の耳に届くことはなかった。ただ自分でも気づいていなかった傷口に、不意に塩をふられたような顔をしている。震える唇が言った。
「俺が、なにから逃げてるって言うんですか?」
「四月一日。誰しも自分のことには疎いものだけど、鈍いにも限度があるわよ?」
侑子はふぅと紫煙を吐き出して、上目遣いに窺ってくる迷える少年と、そしてもうひとりの心優しく我慢強い少年のためにヒントを出してあげることにした。
「四月一日はどうして百目鬼君がひまわりちゃんと仲良くしてると気分が悪くなるの?」
「そんなの、」
「考えなさい」
言いかけた言葉は一刀両断された。
「………………」
「でないといい加減愛想尽かれちゃうかもしれないわよ」

作品名:向ける矛先の形 作家名:轍 きょうこ