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ネイビーブルー
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novelistID. 4038
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トバリの しんわ

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トバリについて聞きたいなんて、何年ぶりでしょうかねえ……。ええ、いいですよ。トバリと会ったことがあるのは、もう、私しかいませんからねえ。彼と違って、あまり話すのは得意ではないのですが、嬉しいですよ。誰かに聞いてほしいと思っていたんです。私が死んでも、この話が残りますように。

 トバリという若者がいました。彼は、姿は若者でありましたが、実はもう何百年もの間、地上を彷徨っているのでした。そのため彼の笑顔は老人のようでしたが、とても優しい人でありました。
 トバリはいつも公園にいて、子どもたちを相手に色々なことを話していました。子どもたちは彼を慕い、色々な話をせがみました。私も、随分とせがんだものです。
 彼について、実は謎は多いのです。名前が「トバリ」だということと、彼が語る話は、ずっと昔、彼がしてしまったことへの後悔の話のようでしたから、村の人が知っているのは、トバリの名前と、過去でしょうね。トバリは話して欲しいという人には、誰にでも話してやっていました。何度でも話してやっていました。「これを伝えるために、僕は生きているんだよ。これを伝えなければならないから、俺はずっと青年のままなんだ」といつも言っていましたよ。
 私も細部は忘れてしまったのですが、何度も聞きましたから、大部分は覚えています。こんな話でした。

 大昔、トバリは一本の剣を手に入れました。その剣は、何でも切れる剣でした。一振りで、周囲のものを瞬く間に切り倒す剣でした。
 トバリはその圧倒的な力を喜びました。そして、それを使って狩りを始めました。今と同じく、昔の人間も、ポケモンを狩り、それをいただいて生きていたんですね。けれども剣を手に入れたトバリは殺しすぎました。食べる以上のポケモンを狩ってしまったのです。村中に配ってもまだ余るほど、殺しました。仕方がないので、余った分は捨ててしまいました。可哀想に、その年に、実に沢山のポケモンたちが殺されました。
 次の年、いくら捜しても、ポケモンが見つかりませんでした。その村から、ポケモンが消えてしまったのです。人々は植え、草や木の実を食べて何とか生きながらえました。トバリは消えたポケモンたちを捜すため、長い旅をしました。初めは村の周りから。徐々に範囲を広げていきました。そして、ようやく彼は一匹のポケモンを見つけました。彼が頻繁に狩っていた、弱いポケモンでした。
 彼は、そのポケモンに尋ねました。
「どうして、お前たちは姿を隠すんだ?」
 ポケモンは静かに答えました。
「お前が剣を振るい、傷つけるからだ。必要な分なら良い。しかし、お前はそれ以上に殺した。私たちの命を、いただくのではなく、奪って、捨てた。だから、私たちは姿を隠した」
 そして、トバリに向かって牙を剥くと、強い口調で言い切りました。
「もしお前がこれからも私たちを傷つけようとするならば、私たちはこの爪と牙で、お前たちの仲間を傷つけよう。許せよ。私たちの仲間を助けるために、大事なことだ」
 トバリはその時、そのポケモンの後ろにもう一匹、同じポケモンがいることに気づきました。そして、そのポケモンの後ろには、さらに子どもがいました。小さな子どもがいたため、彼らはトバリから隠れられずに見つかってしまったのでしょう。トバリは一年前を思い出しました。むやみやたらに剣を振るっていたとき、何を殺したかを思い出そうとしました。しかし、何も思い出せませんでした。あれは、狩りではありませんでした。ただの、虐殺でした。
 ポケモンは、トバリを真っ直ぐに見つめています。トバリは膝を折り、目から一筋の涙を流して叫びました。
「お前たちポケモンが生きていることを、俺は剣を持ってから忘れていた。昔は一緒に生きていて、貰い、与えながら暮らしていたのに、俺は忘れてしまっていた。すまない、もうこんなことはしないと誓う。剣なんて、もういらない。だから、許して欲しい」
 そう言って、トバリは腰から剣を抜くと、地面に叩き付け、力任せに折りました。真っ二つになり、もはや用をなさなくなった剣を見て、ポケモンはどこかに去っていきました。彼の家族たちと一緒に。
 次の年から、村の周りには再びポケモンが現れるようになりました。人間たちはまた、必要な分だけポケモンたちをいただき、そうして穏やかに暮らしたそうです。

 聞いたことがありますか? ありませんか。本にする? ええ、どうぞ。私が許可を出して良いものか分かりませんが、もう、トバリはいませんものねえ。
 トバリの行方は、私にも分かりません。ある日彼は、「旅に出るよ」と言って村を去ってしまったのです。各地で人間が持つには過ぎる武器が作られ、争いが起きたり、ポケモンが大量に狩られたりという話を聞いたからかも知れません。武器を使う人間たちに、話をしに行ったのでしょう。私たちはトバリを忘れぬよう、この町を「トバリシティ」と名付けました。そして、今も彼を待っています。彼は、自分の過去を悔やんで話をしています。ですから、昔の彼のように剣を振るう人間がいなくなれば、きっと戻って来てくれるでしょう。
 彼はまだ戻ってきません。子どもだった私は、もう老人になってしまいました。しかし、トバリの話をどこかで聞くことはありません。
 最近、ポケモンを効率よく、大量に狩る道具が開発されたと聞きました。それどころではなく、人間のことも……。人間が人間を一方的に、しかも大量に殺す武器など、一体何のために必要なのでしょうか。

 年寄りの話を聞いてくださって、ありがとうございます。あなたのそのポケモンは、あなたにとても懐いているようですね。ええ、ですから私はあなたにこの話をしたのですよ。あなたも、忘れないでくださいね。私たちとポケモンたちには、そう違いはないのです。私たちがポケモンを支配しているのではない。私たちだって、ポケモンによって生かされているのです。奢ってはいけません。ただ、共に生きる喜びを。

 伝えてください、トバリの話を。私が死んでも、忘れ去られることがないように。
 あなたのような心優しい方が、一人でもこの世に増えますように。私の願いであると同時に、これはトバリの願いなのです。
 ね、どうか。