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愛早 さくら
愛早 さくら
novelistID. 6143
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髭を剃る臨也と誘う静雄(臨静)

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髭を剃る。
じょり、じょりりと。
音を立てて。
排水溝に流れていく白い泡と、黒い微かの粒は、そのまま彼の欠片。
洗面所で鏡に向かう臨也の後姿を、静雄は戸口にもたれかかって見ている。
この後姿を見るのは、今日で何度目だろうかと思いながら。
臨也は。
その見かけからは勘違いしやすいが、意外と体毛が濃い。
あぁして鏡に向かうのが、日に三度であることを、静雄は知っていた。
そしてそんなことを知っている自分に、内心で苦笑して。
じょりと、また一つ泡が排水溝へと消えた。
鏡越しで。
つるりと削がれた臨也の頤を見る。
偽りのそれは、見慣れた男の影。

「臨也」

ゆるりと一歩、彼へと近づいていく。
鏡越しに視線を絡めた。
彼の紅い瞳へと。

「シズちゃん」

振り返る彼のつるりとなった頬へと手を伸ばして、ゆるりと笑んだ。
それは何かを誘う笑みで。
そしてきっと。

「全く。仕方ないね、シズちゃんは」

肩を竦める彼が歪めた口の端も。
同じ意味を持つ笑みだったのだろう。


Fine.