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メメントモリ1

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 この世界というものはどこへ行っても「死亡」とか云う向こう側、つまりあの世に繋がっているらしくそのあの世とか云うよくもわからない世界に自分は周りより早くたどり着くんだと気付いたら、
ああそれはもうほんとうに、



 メメントモリ 1



 置いていかれるのはいやだ、と子供じみた事をぼんやり思ってやっぱり怖ぇよなァ、と小さく声にだして笑った。
ただ漠然とした死は、どちらかと言うと何も想像出来ない暗闇とか何も無い何も居ない空間にポツンと置かれるとかそういった怖さに似ている気がする。
だけど本当はなんとなく自分が本当に死ぬのかすら自分でもよくわかっていない。
体は確かに弱っていくけれど、なのにこの内から無理やり吐き出される血の色は、どうしようもなく綺麗で悪いところなどなにも無さそうで、せめてこの血がドス黒く染まっていたならなにかを救えたかもしれないのに。
なにかをっていうか自分を、だけれど。
それもなんとなく、イメージでしか無いけど。

「土方さーん」

 死っていうのはこんなに近いもんなんですねェ、と言おうとしたけれどこちらを見た土方の顔があんまりにも険しくて寄せた眉がとても悲しそうで、
(鼻で笑いたくなるような顔だなァ)
そんな事を声に出したらなんとなくその顔がもっとおかしな事になりそうで普段なら違うんだろうが今日はそんな事がとても面倒でただ口をつぐんで「馬鹿だなぁ、このマヨネーズ」と心のなかで毒づくしかできなかった。
面白いとは思えない。
ああ、なんだかなあもう本当に、周りばかりソレに捕らわれているようで肝心な自分は置いてきぼりを食らっているようだ。
もしかしたらこれが死なんだろうか。
周りばかり不幸そうに俺を見ている。
見られている自分は未だそんな事すらよく分からず、なんと言おうか何をしようか死がどういうモンなのか、悩んでいると言うのに。

「総悟、お前は、」

 お前はどうしたい、土方さんが言った。
どうしたい、ねぇ。
ここはなんと答えるべきなんだろうか。果たして、それは答えて叶うものなのだろうか。今、叶えたいもの。
世界をぶっ殺したいなんて馬鹿な話だし、ましてや土方さん、あんたも一緒に死んでくださいなんてそんなもっと馬鹿なハナシだろう?
ああいけねぇ俺は馬鹿だったのか土方さんみたいな。それはサイアクだ…

「…土方さん」
「あ、」
「あんた絶対俺よりアホでさァ」

 なんというか、不安なんで一緒に死んでくださいなんて、まして生きたいなんてそんなこと今更すぎて言いにくいだろう。馬鹿だな。
ああ、そうだ。
せめて華やかに死にたいのかもしれない。
だからこの血はこんなに綺麗なのか、と気付いた。





(死はなんだろうか、分からない恐怖がソレだろうか)


作品名:メメントモリ1 作家名:萩野