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かなめ@シズドタ
かなめ@シズドタ
novelistID. 7520
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空腹

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静雄はキスをするのが好きなのかもしれない、と門田は思った。
 二人きりになると、すぐに強請ってくる。
「強請ってくるって程、可愛げがある訳じゃねえがな」
 不意に思い出した唇の感触に、門田は首を竦めて襟の中に口元を隠した。
 あれは強請ってくる、というものではない。奪ってくるといった方が正しい。
 門田はどうしても落ち着かず、口元を押さえた。
「どうした、門田」
 そんな時にタイミング悪く現れるのが静雄だ。
 サンシャイン60通り、東急ハンズの手前にあるブックオフで、古本を物色していた門田の真後ろに、この街で最も恐れられる男が立つ。
「……静雄か。驚かせんなよ」
「お前、ここ好きだよな」
「読書が趣味なんだぜ、一応な」
 見た目にあっていないかもしれないが、と小さく笑うと、静雄はそんなことないと、首を横に振り、手近な文庫を一冊引き抜いた。
「お前、学生ん時も、本好きだったじゃねえか」
「なんだ、知ってたのか」
「まあな」
 静雄は面倒そうに答え、ぱらぱらと捲っていた本にすぐ飽き、別の棚に戻した。
 門田は笑って、間違えの棚から今しがた静雄が手に取った本を抜いて、元の位置に戻した。
「今日、仕事あんのか?」
「今夜閉店後から、改装の仕事が入ってる。それまでの時間つぶしだな」
 門田は携帯の時計で時間を確かめた。
「あと1時間くらいだ」
「じゃあ、それまで付き合えよ」
 有無を言わさず、静雄は門田がついてくるものだと確信した上で、背を向ける。
「勝手な奴だ」
 門田は買おうか迷っていた本を諦め、静雄を追った。
 飯でも食うのかと思えば、静雄が向かったのは、何故かトイレだった。
「便所か?」
「ちげえよ」
 個室に連れ込まれてから、門田は雰囲気も何も無いなと、獣じみた静雄を見上げた。
「静雄」
「なんだよ」
「それ、外せ」
「ああ?」
「だから、サングラス。はずさねえと、させねえよ」
「あ? なんでだよ」
 静雄は何故だ、とわかっていない様子だ。
「少しは相手の気持ち考えろよ。どうせするなら、相手の目ぇ見て、したいだろ」
 誰かに聞かれても困るので、門田は声を潜めた。
 それが余計静雄を煽る結果となり、サングラスを外した途端門田は息苦しくなる程、唇を貪られた。
「ふ……っ、静雄」
「これで、満足なんだろ?」
 近くで見る静雄の素顔は、言葉の荒っぽさにそぐわず整っている。役者をしている弟と比べても遜色が無い。
「ああ、満足だ」
 唇の触れる隙間で囁くように言葉を交わし、門田も自分から舌を絡めた。いつの間にか、静雄とのキスにも慣れてしまった。
 自分もどうやら、静雄とのキスが好きらしい。
「しずお」
 自分の中に、甘ったるい感情などというものがあるかどうかは、今になってもわからない。
 だが、門田は静雄の髪に指を絡めながら、喉を鳴らした。
 隣の個室に他人が入ってこようが、声を殺さず唾液を奪い合った。
「ん、ン……っぁ」
 角度を変え、いくつもキスを繰り返した。
 煙草の苦い味すら、愛おしいと思う始末だ。
「んん、ぁ」
 舌の根が痺れそうになるまで絡み合い、ゆっくりと離れる。
「……っ、しつこいぞ」
「文句言われる筋合いは無いぜ」
 言い返せず、門田は濡れた唇を手の甲で拭った。静雄も流石にこの場所で、キス以上のことはするつもりはないようだ。
「こんな場所で言うのもなんだが、飯でも食いにいくか?」
「飯なら今食った」
「はあ?」
 門田は思わず、間の抜けた声を上げてしまった。
「俺もこれから取り立てがある。トムさんと待ち合わせしてるから、またな」
 静雄は一度外したサングラスを、すぐに掛け直した。
「お、おい……」
 することだけしてとっとと去ってしまう静雄の背を追うことが出来ず、門田はトイレの中で立ち尽くした。
 キスで満ちるのは、腹ではない。
作品名:空腹 作家名:かなめ@シズドタ