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【鳥のように 風のように / 分かれ道】

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【鳥のように 風のように / 分かれ道】



 さて どうしようか?

右の道を選べば 海沿いの町へ

左の道を選べば 山あいの町へ

 多分 追っ手は 此処までは来ないだろうけれど お尋ね者になっているのは間違いない
なにしろ俺達三人は、神官殺しと兵士大量殺人犯の極悪犯人なんだから。


 エレフは (多分)神官を殺したのだから仕方ないとしても ミーシャには 本当に悪い事をした。
もちろん あのままだったら 大変な目に遭っていたのだから エレフが助けたのは良かったし
それが 生き別れの妹ミーシャだったのだから、残酷な悪戯ばかりする運命の女神も
たまにはイキな計らいをするもんだ。けれど、その後がイケナイ。
いやいや確かに ちょっとやり過ぎたなと 今になっては反省しているよ・・ 少しはね


 俺が、矢で射殺した追い掛けて来た兵士達にも、あの変態揃いの神官どもにも家族は居るだろうし
いやいやいや、言い訳するわけじゃないけれど あの時は 必死だったんだ。


「どうするの?エレフ…」

 ミーシャが 心細げに エレフに言った。 ああ! なんて可愛いんだ!!
見た目は エレフにそっくりだけど、やっぱり女の子は違うなと思う。
ふわふわ柔らかそうで 何だか良い匂いがする。
俺が ニヤつきながら ミーシャを見ていたら エレフの奴が 横目でジロリと 睨んだ。
別に 良いだろう 見ているだけじゃないか! 俺にだって 綺麗な花を愛でる権利くらいあるだろう。

「どっちにする?」

 俺も エレフに聞くと エレフは黙ってミーシャの足を指し示した。
すらりと延びた白い足の指先に 馴れない長い旅のせいでサンダルの革紐が食い込み 血が滲んでいる。
とても山道なんて歩けそうもない。 なら 答えは簡単だ 海沿いの道を選ぼう。
まだ追っ手が掛かっていれば、女の子連れの逃亡者が どちらの道を選んだのか
すぐに分かってしまうだろうけれど仕方がない。
その時は、その時、俺達ふたりが全力でミーシャを守るだけだ。

「海沿いに行こう」

「ああ、そして出来たら 何処か遠い所に行く船に潜り込もう」

 珍しくエレフと俺の意見が 一致した。

「さぁ 辛いだろうけど 頑張って ミーシャ」

 俺が そう言って ミーシャに手を貸そうとしたら、 またまたエレフがジロッと睨んで言った。

「ミーシャは 俺が なんとかする、オリオンは 追っ手を警戒してくれ」

 へいへい 分かりましたよ! では 姫君は王子様に任せて 俺は護衛に専念させていただきます。
でも エレフ 知ってるか? 兄弟同士で 結婚は出来ない事を…
まぁ 天上の神々は あまり そんなのは 気にしないみたいだが。
とにもかくにも、ミーシャを 嫁さんにしようって奴は、よっぽど勇気が必要だろうな。
俺は とりあえず ミーシャの事は 酸っぱい葡萄だと思っておく事にしよう。

 それにしても 可愛いな…

 途端に エレフが ミーシャの肩を引き寄せ ガルルと唸った。
くわばらクワバラ! 障らぬ神に 祟り無しってやつだ!

「さぁ、行こうぜエレフ!ミーシャ!」

 気を取り直して、そう言うと、俺達三人は また 歩きだした。

 目指す先には 暗雲が重く立ち込め 嵐が近い事を告げ
そこには 俺たちの運命を左右する出会いが待っていたのだけれど

その時の俺たちには 知る由もなかった…