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パンと赤ワイン

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俺のナイフじゃあ肉どころか薄っぺらい皮膚でさえ中途半端にしかくわえ込まないくせに。
あんな色気のない只の鉄の固まりが彼の肉に挿入るなんて吐き気がするよ。許せないじゃない。
自ら手招いた事とは謂え臨也は不愉快で不愉快で仕方がなかった。

(次は私情塗れで俺が直接撃ち込んでやろうかな)
分厚い包帯で隠された静雄の太腿を愛おしそうに撫でながら臨也は思う。
本当なら自分のナイフで肉を思う存分抉りたい欲望でいっぱいなのだが、ダイヤモンドの刃で造られたナイフを手に入れない限り不可能だろう。いや、たとえ地球上で一番堅い物質でも、静雄の肉のどこまで達せられるだろうか。
ナイフが造れるほどのダイヤモンドって幾らぐらいするのかな。
頭の中で空想の計画を練り上げながら、ぼんやりと思う。
切った静雄の薄い薄い傷跡から滲む血。それは赤くて、意外と、いや、艶かしいほどの白さの胸元へ、腕へ、頬へ、首へ。
学生時代に傷つけた彼の肌を思い、臨也は初恋を思い出す少女のような顔でうっとりと目を細めた。
一筋の傷跡はすぐに消えたが、臨也の脳裏に植えついた赤の鮮やかさと艶かしさは今でも鮮明に思い出せる。あの傷を思う存分舐め回したい。
堪らなくなって咥内に溢れる唾液に口元を歪め、ぺろりと唇を舐めた。

太腿にゆっくりと舌を這わせると、布とアルコールのきつい匂いが鼻を突く。
(不味い)
(不味いよシズちゃん、ほんと不愉快)
臨也が口にしたいのは直接舌に感じる静雄の肌とそこから湧き出る血と肉なのだ。
独特の甘さと酸味が舌をぴりりと刺激する、あの血と肉なのだ。
それでも包帯を鼻でかき分け犬のように傷口を漁る。新羅の打ったきつい鎮静剤のお陰で、深い眠りについている静雄は軽く眉に皺を寄せただけだった。
(新羅ったら無粋だね。どうせなら動けないけど意識だけあるような趣のあるきつい筋弛緩剤あたりにでもすればいいのに)
そう思いながらもぺちゃぺちゃと傷口を漁る事は止めない。消毒液の刺さる匂いが不愉快だが、段々と傷から湧き出る錆び付いた匂いで臨也は興奮していた。
う、と微かに開いた静雄の唇から声が漏れる。臨也は充満した体の熱が一気に下部へ集まるのを感じて身震いする。
(はは・・・これでもっと喘いでくれたら最高なのに)
徐々にアドレナリンに犯されていく脳に歓喜を覚えながら、臨也は下半身に手を伸ばす。
予想通りの興奮を返すそこに、臨也は厭らしく笑う。
(・・・ああ。太腿や脇腹じゃなくて、あそこなら穴が元から空いてるよね)
そこに己の欲望を思うままに撃ち込めば、処女のように血を散らして彼は叫び開いた肉を見せてくれるだろう。粘膜の奥の充血した肉の固まり。そこに鉄の固まりでもステンレスの刃でもない自らの体から生まれた凶器が刺さるのだ。
(いいなそれ。やば、シズちゃんとセックスしたい)
(大嫌いな大嫌いなシズちゃんに性欲を覚えるなんて気に食わないけど、でも意外と想像してみたら嫌じゃないな)
(むしろ)
喰い尽くしてしまいたい。
(ああどうしよう。なんだかすごくセックスしたい。セックスしたいよシズちゃん。ねえ起きて)
食欲が満たされると性欲も満たされるという俗説を思い出し、臨也は可笑しくなった。
彼の肉はこのパン、彼の血はこのワイン。
ふと、世界で最も人口が多い宗教の儀式を思い出す。そこではそのパンとワインを口にすることで、父なる者の存在を体で感じるのだ。
(なんだかんだいいつつカニバリズムじゃないかっつーの、ね)
徹底した無神論者は思い嘲笑う。
(血と肉を食べ物に喩えてそれを食す。俺からすればちっとも理解できないね)

パンもワインも只の食べ物。
彼の生々しい血でも肉でも何でも無い。臨也が口にしたいのは、生々しい静雄の味。
次々と湧き出る唾液を舌に絡めながら、臨也は静雄の体に跨がった。
作品名:パンと赤ワイン 作家名:y_drm