二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

夜桜を二の次に

INDEX|1ページ/1ページ|

 



 日が落ちきって練習が終わった時間帯、街灯が音もなく灯り始める。皆がシャワーを浴びている中、合宿所を抜け出してきた(一方は手を引かれて連れ出された)二人は小学生の姿もない(日曜日だったので尚更である)小学校の脇道を歩いていた。少し、肌寒い風が揺らす桜木の枝は仄かな美音となって会話のない二人を彩っている。今日は午前中から風が吹いていたせいか、所々に溜まっている桜の花弁がアスファルトの地面に美しく散っていた。乱雑な水玉模様が無数に続いている様は見つめていると天地が逆転したような気分になってくる。アスファルトの黒はあの、星一つ出ていない曇り空と今一つになっている。街灯の真下の枝を引いて桜をぼんやり眺めると、夜空だかアスファルトだかの背景と対比するかのように仄かに発光して見えた。

「佐久間、来いよ」

 少し先を歩いていた綱海が、佐久間が後に続いていないことに気付いた。急かされた佐久間は帝国では滅多に見ることの出来ないその桜を離し、どういう訳かこちらに背を向けて地面にうずくまっている綱海へと歩み寄る。

「?どうしたんだ、つな……」

 瞬間的、勢いよく立ち上がった綱海に驚いた佐久間は僅か肩を揺らした。次に疑問符を浮かべた時、視界の向こうから向かい風が勢いよく吹き始めた。それを待ちわびていたかのような綱海がゆっくりと反転する。風に乗って桜の花びらが無数に佐久間を襲った。その多くは綱海の両手から放たれている。所々に溜まっていた桜の花弁を夜風に散らし、満足そうに綱海はこの場にそぐわぬ快活な笑顔を浮かべていた。佐久間には彼の喜ぶ理由が分からない。しかし彼が喜んでいるという事実こそに佐久間は喜びを感じる。

「綺麗だな」
「ああ、桜は日本の宝だ」
「ん?そうだな、桜も綺麗だと、思うぜ」

 口角を上げたままの綱海が再び佐久間の手を引いて歩き出したため、佐久間は混乱するばかりの思考を整理も制御も出来ずにいるのだった。








作品名:夜桜を二の次に 作家名:7727