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骨の髄まで味わって下さるならば

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 造形が違う。そう感じさせられる。特に細い鼻筋は すう、と通っていて、線が美しい。伏せ目がちになれば長い眉毛が瞳に影を作る。アラビア系独特のエキゾチックな装いに溜息さえ零れてしまう。実に絵になる。だがしかし動いてしまっては当然絵にはならない。こちらの視線に気付いたらしい相手が意地の悪い(それでいてどこか上品な)笑みを浮かべた。

「どうした」
「別に」
「次郎」

 ビヨン・カイルは俺のことをファーストネームで呼ぶ。両親は忙しく家にほとんどいない上、中学からは規律正しい帝国学園での寮生活だったので、俺は呼び捨てで下の名前を呼ばれる機会がないも同然なのである。そんな中独特の低いあの声で囁かれると、違和感が脳髄に痺れとなって現れる。耳に入り込むその音だけで心臓が大きく一跳ね。女女しいと我ながら思うが、慣れていないものはしようがない。

「お前は可愛いな、次郎」

 目を細める相手が一気に距離をつめる。顎を持ち上げられて、もう片方の手で顔にかかった髪を除けられた。その親指が瞼から眉へ移動し鼻梁を伝い下りて唇へと触れる。口内に入った親指は歯並びを沿うように流れ、やがて舌を蹂躙し始めた。このまま親指を噛み千切ってやろうかと思考するが、実行に移せば生涯をコイツに捧げるはめになりそうなので自粛という保守をしておく。第一これ位で動揺していては身が持たないと言うことを、それこそ身を以て知っているのだ。癪ではあるが逆らうことは懸命ではない。
 口端を撫でていった親指の軌跡が冷える前に、相手の唇がそこを塞ぐ。これも大人しく受けるが、ゆっくりと後退して背中を壁に預ける。こうでもしないと自らの力では立っていられなくなるのだ。

「ふ、ぁ、っ……んン」

 口唇が痺れても終わらないキスがいよいよ酸欠を引き起こしてくる。壁に押し付けられながら少しずつ抜けていく膝の力。覆い被さるように口内を犯されて、その激しさに零れた唾液が口端から首筋に伝った。

「次郎」
「カイ、「ビヨンだ」

 面白くなかったのか、下唇を噛んできた彼が言い放つ。ファーストネームで呼ぶのは自らのことがあった今気が引ける。逡巡していると更に機嫌を損ねた相手が唇を喉元へ移動させ、あろう事かそこに噛み付いてきた。

「いッ!」
「次郎」

 咎めるような口調だった。この獣は頭脳明晰な分、質が悪い。逆らうのは、得策ではないのだ。

「………ビヨン」
「…次郎、可愛いな。いっそ食べてしまいたいくらいだ」

 顔を上げて目が眩みそうな笑みを浮かべたかと思ったらそんな言葉を放ってくる。ご機嫌ならご機嫌で、質が悪いことは変わりない。





(骨の髄まで
味わって下さるならば)
(その内
自らシロップをかけそうな自分が怖い)