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許さない、お前は俺のものなのに

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「カイル?……なあ、どうしたんだ」

 佐久間にはこの男がなぜ怒っているのか理解が出来なかった。静かなのに鬼気迫る表情は恐怖を増して襲いかかる。自分は何かしたのだろうか。掴まれた腕が痛んで散らばりそうになる意識を集中させる。

 何の変哲もない日常だった。普通に練習があって普通に練習をして、休憩時間に談笑して。髪が少し伸びたんじゃないかだなんて周りに言われたり、新しいスポーツドリンクを試したり。朗らかな雰囲気だったのを、突然崩したのは沈黙したまま佐久間の腕を掴み、足早にその場を後にしたカイルだった。
校舎裏の壁に押し付けられて、間近で凝視されているこの状態が佐久間は辛くて仕方がなかった。やがてカイルの指先が後頭部へと入り込み、そのまま反転させられて佐久間は額や肩を強かに壁にぶつけた。小さな悲鳴を聞いてなお、その手は優しさをなくしている。僅かに見える佐久間のうなじを強調させるように、頭を押さえ付けている手と反対で髪を掻き分ける。吹き抜けた風が撫でて寒気を感じる前に、カイルはそのうなじに噛み付いた。

「ッッッ!!!!!!」

 仰け反るように体を曲げた佐久間が目を見開いている。膝が、指が、そして固まっていた全身が僅かに震え始める。容赦ないその、肉食獣の咀嚼は、一部の肉をそぎ落とされたのではないかと思う程だった。集中していた痛みが じわり、と広がり始め、どうしても瞳が潤んでしまった。背骨を貫くようなそれに未だ強張った体が回復する前に、襟を思い切り引っ張ったカイルが、剥き出しになった肩に再び歯を突き立てた。

「ヒッァッ……!」

 引っ張られて締め付けられている首筋と、噛まれた箇所、そして未だ痛みを主張するうなじに意識が白濁しそうになる。瞬きをする度に溢れてくる涙がこぼれ落ちそうになり、視界はぐちゃりと歪みきっていた。伸びるどころか裂けるような音がユニフォームから聞こえるが、カイルは全く気にする様子がなかった。息をするのにも痛みを感じる佐久間は、呼吸困難に陥りそうになりながら、見ることの出来ない相手の表情が恋しくなった。怖い、そして悲しい。カイルは何に怒っているのか、理解が出来ない。痛い。息が苦しい。更に腕や背中に噛み付いたカイルは容赦なく佐久間に惨たらしい痕をつけていった。その柔肌からは時折血液さえ流れる始末だった。いよいよ頭の整理が出来なくなった佐久間はボロボロと涙を流し始めた。しゃくり上げる息と悲鳴の合間、何とか言葉にした一言に、相手が僅か動きを止める。

「っいた、ぃ……ビヨ、ン………っいや、いやだ……っ痛い……」

 カイルの唇が剥き出しの腕を伝う。最早恐怖しか感じないその行為に、佐久間は体を強張らせて震えている。指先まで届いた舌頭が柔らかくそこを含み、甘噛みに留まったことに佐久間は僅か顔を上げる。
そしてそのまま腰を掴まれて一気に抱き締められた佐久間が、再び体を強張らせたことに短い息を漏らしたカイルは歯形の残る箇所に優しくキスを落とした。びくん、と反応しながら唇を噛み、佐久間はそれに耐えていた。

「駄目、だ」
「ビヨン……?」
「渡、さない、わたさない渡さない」

 それは子供が駄駄を捏ねるような言い草だった。涙に濡れている佐久間よりも悲痛そうなカイルは、融合を望むかのように腕の力を強めて、その言葉を繰り返し囁いた。段段強くなる口調に再び恐怖を感じた佐久間が身じろぐことさえ許さずに、カイルは再びうなじへ噛み付いた。

「!!!!!」

 同じ所を噛み付かれ、佐久間は目を剥いて息を詰めた。どろり、と生温かいそれが背筋を下りていく。惜しむようにそれを舐め上げたカイルが、力の抜けた佐久間を引き寄せ、未だ不服そうに、そして傲慢を掲げるような表情になりながら自由気ままにキスを落としていく。恐怖として刻まれた本能が、カイルの唇の動きで体を跳ねさせる。

「お前は俺のものだ」

 吐息で耳元に落とされた言葉に、眼前を暗くしながら、それでも佐久間自身どこか安堵を浮かべている己に絶望を深めるより他なかった。






(許さない、
お前は俺のものなのに)

誰が触れられていいと言った
誰が談笑していいと言った
誰がお前の瞳に俺以外を映していいと言った

俺の許可なしで、
お前は生きることさえさせやしない。