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口先だけじゃ足りないの

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 いきなりキスされた。いつの間にか所有物みたいに扱われた。
キスは鬼道さんのために大事にとっておいた初めてのものだったのに。俺は今も昔も鬼道さんの参謀で、鬼道さんのものなのに。
出会い頭にトラウマになりそうなディープキスをされた夜、女みたいに情けない思いに嘆く惨めさに、俺はあいつを呪った。この先一生会いたくない。あの整いきった顔が憎くて仕方なかった。そんな感情をあざ笑うかのようにあいつは翌日平然と俺の前に現れた。
動かない足が軋む中、あいつは顔色一つ変えずにまたキスをしてきた。今度こそはと精一杯の抵抗で相手を蹴り上げたのに、それすら楽しむように笑みを浮かべた。

 そうしてずるずると、俺はあいつに流されていった。
突然のキスにも、いきなり抱き締めてくるのにも、誰かと話しているだけで機嫌を悪くするのにも、ふとした瞬間に首に指先に噛み付いてくるのにも、あの肉食的な中身と裏腹の妖艶な美貌にも、狡猾でそれこそ狩り捕られるような感覚にも、いつの間にか、慣れてしまったのだ。俺はあいつの何で、あいつは俺の何なのか、なんて不毛なことまで考える始末。
今だって流されるままに電車酔いをしたあいつに膝枕をさせられている。俺の、柔らかさなんてまるでない足に頭を預けて何が楽しいのだろうか、わからない。
あいつは満員電車でよく酔ってしまう。目的の駅まで保ったはいいが、今ではもう憔悴しきってしまっている。駅の近くの河原は、肌寒さは少しあるものの、酔いを覚ますには丁度良いのかもしれない。微風があいつの髪を揺らす。長い睫毛がその瞳を隠している。
 この、弱った今ならささやかな復讐でもできるかもしれない。そんなことを思いながら行動に起こさない自分にまた嫌気が差す。


「お前はどういうつもりで俺に付きまとうんだろうな」

 ぼそりと呟いた言葉があいつに届くことは望んでいなかった。しかしいつの間にか目を開いていた相手が溶けそうな声色で言い放つ。
「好きだから」
「!」
「と言って、満足できるか?」
「カイル、」
「もう無理な癖に」

 三日月型に歪むあいつの唇が近付く。意識と裏腹に上半身を折りながら俺はその口付けに応える。ああそうだ、お前のせいで俺はもう。





(口先だけじゃ足りないの)

いつの間にか絡め捕られて、
この愛に欠乏している