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Shina(科水でした)
Shina(科水でした)
novelistID. 3543
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燃費のはなし

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あまり知られていないことだが、羽島幽平こと平和島幽は大食いである。
あれば、あるだけ食べる。
無表情でバキュームカーのごとく目の前の食べ物を収めて行く。
そんな彼の姿を見たことがある者は目をまるくして首を傾げた。
その細い体のどこに、と。
そんな彼には兄がいて、彼の食事を見た関係者はお兄さんもよく食べるのかしらと思いをはせる。
今日は、彼のお兄さんのはなし。


燃費のはなし


「おまえって、びっくりするほど食わないのな」
「そっすか」

上司の言葉に静雄は首を傾げた。
例のごとく昼食に立ち寄ったファーストフード店。
言われて静雄はそれぞれの食事を乗せたトレイを見比べてみた。
トムのトレイには、期間限定商品のセットとナゲット。
ついでに、チーズバーガーが単品で乗っている。
それに対して、自分のトレイには単品のハンバーガーとSサイズのフライドポテト。
ついでにMサイズのシェイク。
それらを見比べて、静雄はそうかもしれないとぼんやりと思った。

「なんか、人の見てるだけで腹いっぱいになるっていうか。そんなに腹が減らないっていうか」
「燃費が良いって言うのかね。あんだけ動いてんなら人一倍食っててもおかしかねぇのにな」
「そうですかね。今まであんまし意識してなかったんで分からないんですけど。あー・・・でも、そうかもしれないっす。休みの日とかよく飯食い忘れるかも」
「そんなんでよくそんなに伸びたな」
「っす、そういや、幽にもそんなこと言われました」
「おー幽くんも、やっぱり食わねぇの?」

トムは、霞でも食べてそうな静雄の弟の顔を思い出しながら尋ねた。

「幽っすか?幽は食いますよ」
「へー」
「なんか、あればあるだけ食います」
「あるだけ?」
「はい。まえ、一緒に飯食いに行ったんすけどあいつ迷わないんすよ」
「食うもん決まってんのか」
「はい。『とりあえず、こっからここまでぜんぶで』」
「・・・・・・」
「やっぱマックだったんですけど、あんなに待たされたのは久しぶりでしたね」
「・・・・・・」
「・・・・・・?」
「こっから、ここまで?」
「ああ、えっと。単品のバーガー類全部と、サイドメニュー全部って、そんな感じです」
「はは・・・」
「?」
「そりゃ、すげぇな」
「やっぱ、食いすぎですかね」
「あー、いいんじゃね。すげー仕事してっし、食えるだけ食っときゃいいべ」
「そっすね」
「つーか、やっぱお前は食わなさ過ぎ。ほれ、これやっから食っとけ」

トムはそう言うと、開いていた静雄の口にナゲットを放り込んでやる。

「トムさん、マスタード辛い」
「そんくらい、辛いの内にはいんねーっつの」
「うー」

放り込まれたナゲットのソースに不満を漏らしながら静雄は口の中を空にすると、キュイと奇妙な音を立ててシェイクに吸い付いた。

「シェイクはMサイズ」
「あまいもんは別腹ってやつですよ」


***


大食漢な幽と少食な静雄のはなし。
幽が誕生日だからという理由でコース料理を食べにつれてってくれたのに、メインの前におなかいっぱいになっちゃう静雄萌え。
でもデザートだけは意地でも食べる。
(他のは幽が食べました)