恋するお題 優しい気持ち
優しい人なんだと――――思う。
いつもサングラスをかけて、その瞳を隠している。
少し短気だな、とか
凄い力だな、とか
色々と考えるけど……でもホントは優しいんだ。
そして、少しだけ恐がり
自分の力で人を傷つけてしまうのが恐いんだ。
それぐらいなら1人でいる方を選ぶ。
そんなの寂しすぎるのに――――
きっと僕には想像もつかない生活を送ってきて、色々な事があったんだと思う。
『ホント、フツーに生まれて、フツーに育ったつもりだったんだけどな……』
そう、寂しそうに笑う。
それが寂しくて、切なくて、何だか泣きたくなった。
静雄さんはクシャッと髪をかきまぜてくれて、いつもみたいに『気にすんな』って言ってくれた。
優しい
優しい人―――
「静雄…さん、あの……」
「ん?」
夕暮れの池袋
偶然出会った僕達は2人連れ立って歩いていた。
お互いにそんなに話す方じゃないから、2人とも無言になってしまう。
こんな時、正臣がいたら何かと話し出すんじゃないかと思うけど、逆に静雄さんがイラッとくる可能性も否定できないからいなくても良かったと言うべきか……
それでも、意を決して話しかける。
「あの、今日は……夕飯とか……」
「あーカップ麺とか?」
「カップ麺……ですか?」
「まぁ、だいたい」
思わず、静雄さんの頭からつま先まで視線を動かしてしまう。
「なんだよ?」
「そ・そんな……」
「は?」
「なんでカップ麺だけでそんなに身長が伸びるんですか!!!」
「おい……別にカップ麺だけで育ったわけじゃないつーの」
「あ・そうか!そうですよね……」
「身長なんざそのうち伸びるだろ?」
ぽんぽんと頭を叩かれると、何となくそんな気になってくるから不思議だ。
「静雄さんくらい伸びますかね?」
「…………いやー、まぁ、そこまで伸びなくても良いンじゃねぇか?」
「え!?そんな!!夢ぐらい見させて下さいよ!!」
「お前はそんなに変わらなくて大丈夫だよ」
クシャッと髪を掻き交ぜられると、なんだか気恥ずかしくなってくる。
「よし、なんか食ってくかー」
「はい」
夕暮れの池袋は――――
いつもより優しく感じた。
作品名:恋するお題 優しい気持ち 作家名:ペコ@宮高布教中