草壁奮闘記
私の朝は、先ず委員長に電話をかけることから始まる。しかしこれが中々、私を悩ませてくれるのだ。
「草壁、話があります」
私は並中校門前で、登校した委員長と、委員長と一緒に来た骸さんに会うのだが。いつも骸さんは私に話があると言い、委員長に隠れて急所を攻撃してくるのだ。
「雲雀君のモーニングコールは僕の役目ですから、フランスパンは黙っていなさい」
そう言われても……。私が委員長に命令されていることなので、勝手に止めたら咬み殺されかねない。しかし今骸さんの申し出を断れば、確実に急所を潰されるだろう。本当に命がいくつあっても足りない。
だが委員長についていくと決めた私は、自分がどうなろうと委員長と骸さんについて行く義務がある。
「へい……私も骸さんに任せたいのですが、委員長からの指示ですので」
「それはあれですか? 僕より自分の方が雲雀君に頼られている、という自慢か何かですか?」
「そんな滅相もない! 骸さんは委員長に一番頼られ愛されていますよ」
「クフフ、ですよね」
骸さんは機嫌をよくしてくれたのか、相変わらず変わった笑い方をしながら笑みを溢す。私はそれに安堵した。
だがこの後、私は警戒を解いたことを後悔することになる。
「ですが、貴方にはお灸を据える必要がありそうです、ね!」
骸さんの蹴りあげた長い脚が、私の急所にクリーンヒット! こうなったら私は、潰れるしかない。
「クハハ、いい気味です」
骸さんはどうやら、私が潰れたことにより、かなり機嫌をよくしたようだ。だが痛い……私はいつか不能になりそうだ。
委員長がやってくると、骸さんは態度を一変。
「草壁が汚い物を僕に向けてきたので逃げていたら、天罰を下すかのように、犬が草壁の急所を咬んだんです」
委員長は骸さんの潤んだ瞳に弱い。事実は一切含まれていない骸さんの言葉を信じた委員長は、一度骸さんを抱き締めてから、獲物を取出し私に向き直る。
「君には灸を据える必要がありそうだね」
先程の骸さんと同じことを言って(流石似た者同士のカップルだ)、私を遠慮なく咬み殺した。
あぁ、今日も空が青い。
fin.