プププランド的な
今日はカービィの誕生日だった。
仲間たちがパーティを開いてくれるとのことでカービィはご機嫌だった。
「そういえばだいおーも今日が誕生日だっけ?」
ぶらぶらと散歩をしながらふと思い出したようにつぶやいた。
張りあったり、闘ったりすることもあるがなんだかんだ言って長い付き合いである。
「いちおー、おめでとうぐらいは言おうかな。」
パーティの始まりまではだいぶ時間がある。どうせ暇だし、とふわふわと飛んで行った。
「なんだ、これ。」
カービィがお城につくといつもは隙だらけなのに今日に限ってなんだか厳戒態勢をとっている。
「だいおー、またなんかたくらんでるのかな?」
こそこそするのは性に合わないのでむうっとした顔で真正面から入ろうとした。
「やあ、ちょっと通してくれるかな。」
「か、カービィ!」
見張りたちが一斉にざわめきだした。ピンクの悪魔の異名はだてじゃない。城の者たちはカービィの強さを身をもって知っているのである。
止めようとする気配はあるが吸い込まれたらたまらない。そんな様子の中城の内部に悠々と侵入しようとしたとき、
「全く、いい度胸だな。」
「なんで城住みでもない君がいるの、メタナイト。」
立ちふさがった男に声をかけられ、カービィは立ち止まった。
「悪いが今ここを通すわけにはいかないな。」
見ると彼の背後にはメタナイツが控えており、周りにはコピーできそうなものはない。かなり分が悪い。
ため息をつき背を向けぽつりとメタナイトに言った。
「らしくないね。」
「ああ、そうだな、だが大王さまからのお達しなのでな、悪く思うな。」
「だいおー、さま?」
その呼び方に違和感を感じ振り向いたときもはやメタナイトはカービィに関心を向けていないようで部下たちに指示を出していた。
「……あと三時間だ。急いで準備を進めるぞ。」
「はい!」
カービィはいったん城から離れた。先ほどのメタナイトの言葉が引っかかったのである。
メタナイトはデデデの厳密にいうと部下ではない。デデデの依頼が彼の「正義」と重なるものであれば協力をする、といった関係だ。
逆を言えば「正義」に反すると思えばどんなものとも敵対するのであろう。
依頼を受けている間に彼が普段つけることのない「大王さま」という敬称をわざわざ用いるのは、彼なりの筋の通し方なのだろう。
ということは今彼、および彼の直属の部下メタナイツはデデデに雇われているのだ。
今のところ何かの異変が起きている兆しはない。そして自分をあそこまで城に近づけたがらないということは……。
「今から何かを起こす気なんだ。」
絶対に“悪だくみ”を止めてやる。まっすぐな瞳で再び城を目指した。
しばらくたって戻ってみると先ほどまでの見張りの数がうそのように入り口付近には誰もいなかった。
デデデならともかく相手はメタナイトである。いったん退けたからと言って油断するほどお人好しではあるまい。
罠だろうか、とカービィが警戒していると水平帽子のワドルディが箒をもって出てきた。
「ワドルディ」
悩んでいても仕方がない、飛び込むだけだと声をかける。
「あ、カービィ、どうしたの、こんなところで。」
のんびりした口調で尋ねられた。その敵意の全くない様子に毒気を抜かれたものの探りを入れた。
「今日お城でなんかあるのかなと思ってさ。」
「ああ、お城の広間で集まりがあるんだって。」
あっさりと教えてくれ、勢いづいて問いを重ねた。
「それって何の?」
うーんと、と空を見上げながらワドルディは答えた。
「なんのって、そこまでは僕にもわからないよ。メタナイトさまやメタナイツのみなさんも忙しそうに動いていらっしゃって……。
僕もお手伝いしたいって言ったら、それじゃあここで掃除をしておくよう言われたの。」
おそらくワドルディが邪魔だったからうまいこと遠ざけたってところだろう、そうあたりをつけカービィはお礼を言うとワープスターを呼び出し仲間たちのところに飛んで行った。
「おい、カービィ、どこ行ってたんだよ、遅いじゃないか。」
姿を見せたカービィにリックが声をかけた。
「大変なんだよ、だいおーがまたなんかたくらんでるんだ!」
「なんだって?」
カービィは仲間たちに城の様子がおかしいことを話した。
「もうすぐ広間での集まりが始まる。急ごう!」
その場にいたリックを引き連れてカービィは城へと急いだ。
ぐんぐんとワープスターのスピードを上げる。
「このまま突っ込むよ。」
ぎゅっとリックはつかまった。そして広間のある窓に飛び込んだ、その時……
べちょ、っと彼らは白い“壁”にぶつかった。
「なにこれ? ケーキ?」
顔についたクリームをなめとりカービィは顔をあげた。
そこにかかれていたのは「カービィ誕生日おめでとう」という垂れ幕だった。
「へ?」
あたりを見渡すとクリームまみれの自分たち以外にもたくさんの人が集まっていた。
「ははは、俺様の計画は大成功だな。」
ひときわ大きな声で笑い転げている男の姿を見つけた。
「だいおーどういうこと?」
「カービィ、どうやら担がれたみたいだな。」
ワドルディたちに体を拭いてもらったリックがため息交じりに声をかけた。
「お前さん、誕生日のことすっかり忘れてただろ。ピンク玉。」
「……うん。」
デデデが何かを企んでると思い込み他の事には全く気が回らなかったのである。
カービイもプププランドの住人らしくのんきで抜けている。
「じゃあ、メタナイトもグル?」
少し集団から離れた所から部下とともに立っている彼に声を投げた。
「全く、別件で来た私たちにも協力するよう申し出てくるのだからな、困ったものだ。」
肩をすくめながらのその言葉を聞き、渡されたタオルで体を拭きながら「そういうことか」とつぶやいた。
「ケーキ台無しになっちゃてるけどいいの?」
見るも無残なタワーケーキのなれの果てを見て問いかけた。
「それはお前たち用。俺様たちは別に用意してるさ。」
そういうと扉が開きテーブルにのせられた料理と切り分けられたケーキが出てきた。
ブラックホールなおなかには形なんて構わないってことだろう。
ワドルディたちはテキパキと床に面していない部分だけ器用にケーキ台の上に戻した。
「それじゃあパーティの始まりだぜ。」
開始を宣言したとき喉で笑う声が聞こえた。その声の主は意外なものでデデデも妙に思ったらしい。
「どうした、メタナイト。」
「いや、あなたも抜けているなとおもって。」
「うん?」
何のことかと思っているとワドルディたちが垂れ幕を動かした。するともう一つ名前が見えた。
「デデデ大王さま、カービィ誕生日おめでとう……あ。」
デデデは読み上げると頭に手をやった。
「カービィをはめるのに熱中して自分の誕生日忘れるなんて、人の事は言えないのでは。」
「じゃあ、お前たちの別件って……。」
「まあ、付き合いは長いので。」
そう言って箱を渡す。メタナイツ以下部下たちとともの連名でのプレゼントだった。
「ねえ、メタナイト。」
「何だ?」
「やっぱらしくないんじゃない?」
「ふ、たまには悪くあるまい」
そして私もまたこのプププランドの住人なんだ、と小さく付け加えた。
そうこう話しているうちにまた扉が開いた。
仲間たちがパーティを開いてくれるとのことでカービィはご機嫌だった。
「そういえばだいおーも今日が誕生日だっけ?」
ぶらぶらと散歩をしながらふと思い出したようにつぶやいた。
張りあったり、闘ったりすることもあるがなんだかんだ言って長い付き合いである。
「いちおー、おめでとうぐらいは言おうかな。」
パーティの始まりまではだいぶ時間がある。どうせ暇だし、とふわふわと飛んで行った。
「なんだ、これ。」
カービィがお城につくといつもは隙だらけなのに今日に限ってなんだか厳戒態勢をとっている。
「だいおー、またなんかたくらんでるのかな?」
こそこそするのは性に合わないのでむうっとした顔で真正面から入ろうとした。
「やあ、ちょっと通してくれるかな。」
「か、カービィ!」
見張りたちが一斉にざわめきだした。ピンクの悪魔の異名はだてじゃない。城の者たちはカービィの強さを身をもって知っているのである。
止めようとする気配はあるが吸い込まれたらたまらない。そんな様子の中城の内部に悠々と侵入しようとしたとき、
「全く、いい度胸だな。」
「なんで城住みでもない君がいるの、メタナイト。」
立ちふさがった男に声をかけられ、カービィは立ち止まった。
「悪いが今ここを通すわけにはいかないな。」
見ると彼の背後にはメタナイツが控えており、周りにはコピーできそうなものはない。かなり分が悪い。
ため息をつき背を向けぽつりとメタナイトに言った。
「らしくないね。」
「ああ、そうだな、だが大王さまからのお達しなのでな、悪く思うな。」
「だいおー、さま?」
その呼び方に違和感を感じ振り向いたときもはやメタナイトはカービィに関心を向けていないようで部下たちに指示を出していた。
「……あと三時間だ。急いで準備を進めるぞ。」
「はい!」
カービィはいったん城から離れた。先ほどのメタナイトの言葉が引っかかったのである。
メタナイトはデデデの厳密にいうと部下ではない。デデデの依頼が彼の「正義」と重なるものであれば協力をする、といった関係だ。
逆を言えば「正義」に反すると思えばどんなものとも敵対するのであろう。
依頼を受けている間に彼が普段つけることのない「大王さま」という敬称をわざわざ用いるのは、彼なりの筋の通し方なのだろう。
ということは今彼、および彼の直属の部下メタナイツはデデデに雇われているのだ。
今のところ何かの異変が起きている兆しはない。そして自分をあそこまで城に近づけたがらないということは……。
「今から何かを起こす気なんだ。」
絶対に“悪だくみ”を止めてやる。まっすぐな瞳で再び城を目指した。
しばらくたって戻ってみると先ほどまでの見張りの数がうそのように入り口付近には誰もいなかった。
デデデならともかく相手はメタナイトである。いったん退けたからと言って油断するほどお人好しではあるまい。
罠だろうか、とカービィが警戒していると水平帽子のワドルディが箒をもって出てきた。
「ワドルディ」
悩んでいても仕方がない、飛び込むだけだと声をかける。
「あ、カービィ、どうしたの、こんなところで。」
のんびりした口調で尋ねられた。その敵意の全くない様子に毒気を抜かれたものの探りを入れた。
「今日お城でなんかあるのかなと思ってさ。」
「ああ、お城の広間で集まりがあるんだって。」
あっさりと教えてくれ、勢いづいて問いを重ねた。
「それって何の?」
うーんと、と空を見上げながらワドルディは答えた。
「なんのって、そこまでは僕にもわからないよ。メタナイトさまやメタナイツのみなさんも忙しそうに動いていらっしゃって……。
僕もお手伝いしたいって言ったら、それじゃあここで掃除をしておくよう言われたの。」
おそらくワドルディが邪魔だったからうまいこと遠ざけたってところだろう、そうあたりをつけカービィはお礼を言うとワープスターを呼び出し仲間たちのところに飛んで行った。
「おい、カービィ、どこ行ってたんだよ、遅いじゃないか。」
姿を見せたカービィにリックが声をかけた。
「大変なんだよ、だいおーがまたなんかたくらんでるんだ!」
「なんだって?」
カービィは仲間たちに城の様子がおかしいことを話した。
「もうすぐ広間での集まりが始まる。急ごう!」
その場にいたリックを引き連れてカービィは城へと急いだ。
ぐんぐんとワープスターのスピードを上げる。
「このまま突っ込むよ。」
ぎゅっとリックはつかまった。そして広間のある窓に飛び込んだ、その時……
べちょ、っと彼らは白い“壁”にぶつかった。
「なにこれ? ケーキ?」
顔についたクリームをなめとりカービィは顔をあげた。
そこにかかれていたのは「カービィ誕生日おめでとう」という垂れ幕だった。
「へ?」
あたりを見渡すとクリームまみれの自分たち以外にもたくさんの人が集まっていた。
「ははは、俺様の計画は大成功だな。」
ひときわ大きな声で笑い転げている男の姿を見つけた。
「だいおーどういうこと?」
「カービィ、どうやら担がれたみたいだな。」
ワドルディたちに体を拭いてもらったリックがため息交じりに声をかけた。
「お前さん、誕生日のことすっかり忘れてただろ。ピンク玉。」
「……うん。」
デデデが何かを企んでると思い込み他の事には全く気が回らなかったのである。
カービイもプププランドの住人らしくのんきで抜けている。
「じゃあ、メタナイトもグル?」
少し集団から離れた所から部下とともに立っている彼に声を投げた。
「全く、別件で来た私たちにも協力するよう申し出てくるのだからな、困ったものだ。」
肩をすくめながらのその言葉を聞き、渡されたタオルで体を拭きながら「そういうことか」とつぶやいた。
「ケーキ台無しになっちゃてるけどいいの?」
見るも無残なタワーケーキのなれの果てを見て問いかけた。
「それはお前たち用。俺様たちは別に用意してるさ。」
そういうと扉が開きテーブルにのせられた料理と切り分けられたケーキが出てきた。
ブラックホールなおなかには形なんて構わないってことだろう。
ワドルディたちはテキパキと床に面していない部分だけ器用にケーキ台の上に戻した。
「それじゃあパーティの始まりだぜ。」
開始を宣言したとき喉で笑う声が聞こえた。その声の主は意外なものでデデデも妙に思ったらしい。
「どうした、メタナイト。」
「いや、あなたも抜けているなとおもって。」
「うん?」
何のことかと思っているとワドルディたちが垂れ幕を動かした。するともう一つ名前が見えた。
「デデデ大王さま、カービィ誕生日おめでとう……あ。」
デデデは読み上げると頭に手をやった。
「カービィをはめるのに熱中して自分の誕生日忘れるなんて、人の事は言えないのでは。」
「じゃあ、お前たちの別件って……。」
「まあ、付き合いは長いので。」
そう言って箱を渡す。メタナイツ以下部下たちとともの連名でのプレゼントだった。
「ねえ、メタナイト。」
「何だ?」
「やっぱらしくないんじゃない?」
「ふ、たまには悪くあるまい」
そして私もまたこのプププランドの住人なんだ、と小さく付け加えた。
そうこう話しているうちにまた扉が開いた。