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真夜中の不法侵入者

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目を閉じている。寝ているわけではなく、ただ目を閉じている。

このまま眠ってしまえればいいのにとも思っている。
そうすれば今起こっていることは全部夢で済ませることができるからだ。


さて、ここは自分の部屋で、部屋の明かりは消して、自分は布団に入っている。
これから寝ようと思い、明かりを消して、布団に入ったのだ。
いつもはチャットやネットで夜更かしをしている為かそれほど寝れないという事はないのだが、今日は日ごろの疲れもあり、珍しくパソコンの電源も入れずに早々に布団に入ったのだが、眠いのに寝れないという事態に陥ってしまった。
しかしこれから明かりをつけて暇潰しをするのも億劫なので、明かりは消したまま静かに横たわり、ただひたすらに眠くなるのを待つことにした。
しかし一時間経っても時間は自分を眠りの淵へと誘ってはくれない。
これはやはり暇潰しをしたほうが眠気はやってくるのではないか、そう思い始めた。
布団も熱を持ち、若干暑い。
それでも面倒臭いという気持ちを捨てきれず、横たわったまま、目を閉じたままどうしようか考えていたその時。

キイィ・・・。

という自分の部屋のドアが開く音が聞こえた。
まるで中の様子を窺うように、音を最低限にも立てないように気をつけているような音だった。
自分の部屋はドアを開ければそのまま外だ。
そもそも鍵はきちんとかけたはずだし、風でドアが開くなんて事はありえない。
音は最初に鳴った後しばらく止まり、それでも閉まった気配はない。
そして今度はさっきよりも細い音を鳴らして更にドアが開く音がしたかと思うと、自分ひとりしかいないはずの部屋に人の気配が感じられるようになった。

服のすれる音、押し殺した足音。
人がいるのだ。
暗闇の中目を開ければ、きっとこの真夜中の不法侵入者の背格好くらいは分かるはずだが、もし万が一目を開けたときにその人物がこちらを窺っていたら、眠っていないと知られてしまったら。
自分は殺されるかもしれない。
もちろんただ眠っている相手にナイフを突き立てるということも、ない訳ではなさそうだが、相手の出方を見ないことにはどうにも動けない。
不法侵入者はそろそろとこちらへ近づいてくるようだ。
眠ったふりをし続ける間も、足音はどんどん近づいて、その音と比例して自分の心臓も早鐘のように体の内側で打ち鳴らされている。
足音が頭の横で止まり、不法侵入者がすっとしゃがみこんだのがわかった。
そしてそのまま特に何をするわけでもなく、そこにいるのはわかるが何かをしている気配はない。
ただ、見られているような感じはする。
不思議に思ったが、目を開けて確認する勇気はなかった。

そうして自分は時間の確認などできはしないから、実際はもしかしたら何分という短い時間だったのかも知れないが、長い時間じっと、ただじっと見られ続けた。
相手が何もしてこないとなると、いい加減その視線にも馴れ始め、先ほどの極度の緊張からか、猛烈に睡魔が襲ってきた。
もしかしたら何か盗られるかもしれないと頭の片隅をよぎったが、襲いくる睡魔には抗えず、そのまま意識は遠のいていった。


朝、お決まりの携帯アラームが鳴り響いた。
反射的に飛び起きアラームを止める。
と、その瞬間昨夜の出来事を思い出し部屋を見回すが、物色された気配はなく、部屋は寝る前と同じ状態を保っているようだった。
もしやあれは眠れないというややこしい夢だったのかと思ったが、ふと横を見ると寝る前にはなかったものが布団の横にあった。

それは紙切れだった。
興味のままに拾いあげると、そこには筆跡を感じさせない文字で、ただ一言。


『帝人君はあはあ』


ぶん殴ってやろうと思いました。



作品名:真夜中の不法侵入者 作家名:ありこ