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No.017
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novelistID. 5253
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豊縁昔語―飽咋のはじまり

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 一方の千代丸はわけがわかりません。
 彼は心配げに男を見上げました。

「大丈夫だよ」

 再び千代丸の角のついた頭を撫で、男は言いました。

「君は最近まで人だったから、感覚が混乱しているだけ。すぐに慣れるよ」

 そのとき彼は気がつきました。
 自分の身体がもはや地に足をつけていないこと。手足がなくなって、首と胴だけが宙を舞っていることに。
 そうして、三色に光る目で確かめました。
 一緒にいた童達もそんな自身と同じ姿をしていることを確かめたのです。

「恨みも怨みも飴玉より甘い。君もきっと気に入るよ。さあ、行こう」

 男はそう言って、都の小路を歩いてゆきました。
 その後を何十もの黒い影達が連なって男の後をついてゆきました。



 世は乱れておりました。
 荼毘を生業とする者が、神社で骨と皮だけになった童の屍のところに案内されたのは、それから間もなくのことだったと言います。





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用語解説――飽咋(あきぐい)

元ネタは飽咋之宇斯能神(あきぐいうしのかみ)。
古事記に見える神。
黄泉の国から逃げ帰った伊邪那岐命(イザナギノミコト)が、身を清めようと禊(みそぎ)をした時に化生した神の一人で、伊邪那岐命が投げ捨てた冠から生まれたとされる。「口を開けて穢れを喰う」の意。
この小説では現代で言うところのカゲボウズを指している。