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匂い立つ赤のマニキュア

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男女逆転祭り、となるものがあったというのはスザクから聞いたらしい。イベントで撮ったそれぞれの写真も見せてもらい、ライは青ざめたり苦笑したり、すこしだけ笑ったりした。
表情こそ今は豊かだといえるだろう。この頃のライを見て、ルルーシュはそう思う。イベントの発案などは、ほとんどがミレイのその場のテンションや、勢いで決めたものが多いが、いつも人の斜め上を行く想像をしてこそのイベントである。変わった校風なのはすべてミレイの働きによるものであると思っていたので、それをライにさせるのはどうなのかという疑問もある。だけどミレイにもちゃんと考えがあることはルルーシュも気づいているのであえて何も言わなかった。
そしてライのひとり逆転祭りにもルルーシュは何もいわなかった。否、言えなかったのだ。
絶対似合う、と断言してみせたミレイにルルーシュはだろうな、と小さく息を吐いた。ライの顔の作りは中性的で、ルルーシュから見ても身体の線は細いように思う。おまけに色素も全体的に薄く、儚げな印象は学園に慣れ親しんできているにも関わらず、ずっとまとわりついていた。幻の美形。学園の生徒からは、そう呼ばれているらしかった。
できたわよー、という声に顔をあげる。カーテンの向こうで続いていた攻防戦はどうやらライの押し負けということで収まったらしく、静かになったその向こうから出てきたライにその場に居た人間が呼吸を忘れた。もしかしたら、空気が凍りついた、とライは思っていただろう。
満足気に笑うミレイとは反対にライは初めて会ったときのからっぽな表情が思い出せなくなるくらい、つまり、ルルーシュが同情したくなるくらい、泣きそうな顔をしていた。
すごい似合ってる、と詫びもなく笑顔で言うスザクにライは小さく嬉しくない、と返す。ルルーシュは隣に座っているライの空気の温度がだんだん下がっているのを感じながら、言葉を飲み込んだ。確かに黙っていれば、完璧な女装であった。泣きそうに俯いた表情など少々憂いがあって、変な情が生まれそうになるくらいで、ミレイがその時人の悪い笑みを浮かべたときルルーシュはミレイと眼を合わせるのを今は避けようと決めたくらいだ。要らぬ誤解を他者に与えたくはない。
ミレイとシャーリーは面白がって、飾るなら完璧にしましょう、と勇んで用意しきれなかった化粧道具を探しに出て行った。ルルーシュは落ち込んでいくライに気休めに紅茶を出した。いつもよりも甘めに淹れてあり、今の疲れが少しでも和らぐといい、と思った。つまりはものすごく同情していたのだけど。そのルルーシュの心情を知ってか知らず、紅茶はとてもおいしかったらしく、ライのあまり見れない柔らかな笑顔が返ってきたときルルーシュはとても驚いた。
上品に飲む姿は本当に女性らしく、白い肌に細く長い指の先に丁寧に塗られた赤のマニキュアがより際立って見える。つん、と鼻につく匂いはそれ独特のものであり、よく女性はこんなものをする気になる、とルルーシュは常々思う。しかしそれは艶やかでもあり、やはり見てはいけないものを見てしまった気分に駆られる。思わず逸らした視線の先にある生徒会の資料を読んでいる振りをしながら、それでも意識は自然に隣にいるライを気にしてしまって、仕事にはならなかった。
こんなの認めない、と呟いたのはライだったかルルーシュだったかは、誰も知らない。

 

(あんな顔で笑うなんて反則だろう!)(ルルーシュはやっぱりやさしいな)




お題配布元:不在証明さま
作品名:匂い立つ赤のマニキュア 作家名:水乃