情報提供者は頭が悪い
「おだやかではないな。落ち着きに欠けている」
「てめぇは誰だ。あいつはどこにいきやがった」
「あいつ?」
「しらばっくれるんじゃねぇ、金魚鉢! てめぇみてぇなイカレ野郎、あいつの知り合いに違いねぇ。あの野郎、俺は、俺に――なにをした?」
俺はようやく自分がどこにいるのか、少なくとも自分が横たわっている場所に気づいた。
冷たいスチールの上だ。まるで、まるで、そうだ、ドラマにでてくる検死解剖台のような。
気づいたところで、金魚鉢を頭にかぶった、宇宙飛行士もどきの奇妙な男がため息をついたらしい。煙のようなものが、金属をカタカタ震わせながら金魚鉢から漏れる。吐息のように。
「だめだな。君からはなにも聞けそうにない」
「ふざけんな、てめぇ、ここは!」
それきり、俺はうまく口が動かなくなるのを感じた。だらしなく弛緩する自分の身体。そして、自分が体から抜け出て行くのも。
意識が四散するまえに、一瞬ばかり自分が見えた。横たわる俺はつぎはぎの四肢をだらりとのばした死体だった。
「残念だな」
そして俺を見下ろすドイツ訛りの宇宙飛行士からは、ぽつりとつぶやく声がした。何が残念なものか。
(2009/01/**)
*ヘルボーイ:ゴールデンアーミー
ヨハンの話。
作品名:情報提供者は頭が悪い 作家名:しゅうぞう