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キスで、殺して

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「ファーストキスの相手って覚えてる?」



岸谷が本から視線を全く動かさないまま問いかけてきたので、俺達3人は特に答えなくても構わないのか、と各々時間を過ごす事にした。臨也は相変わらず携帯にもの凄い早さで文字を打ち込んでいるし、俺は読みかけの文庫に視線を落としている。静雄のヤツは、相変わらず眠ったままだ。

「ねぇ、ファーストキスの相手って覚えてる?」

繰り返してきた。
そうか、答えろって事か。

「覚えてるが、それがどうした?」

「あー。門田くんはそうだよね、覚えてそう。で、臨也は勿論――

「覚えてるよ」

携帯を折りたたみながら、臨也は楽しそうな含み笑いを顔に浮かべる。
元々怖いくらいに顔が整った男だが、こういう表情になると普段の清潔感や優等生染みた猫の皮が綺麗に剥がれる。俺としては、どっちでもいいが、まぁこっちの顔の方が見慣れてはいる。

「え、なにそれ。意外だなぁ」

「そう言う新羅はどうなのさ。ああ、どうせアレだろ。やっぱいいや」

「一度聞いて置いて流すなんて酷いね臨也!セルティとキスが出来たらそれは至上の幸せだけど、僕はありのままの彼女を愛してるんだ!首が無くても関係ないくらいにね。だからキスが出来なくっても構わないのさ!」

―――岸谷は、時々不思議な事を言う。
面倒だから突っ込まないが、とりあえず好きな女に一途なヤツなんだろう。

「うん、新羅の変態発言はどうでもいいよ。それより、俺がファーストキスの相手を忘れるわけないじゃない。特別な人なんだからさ」

「へぇ。臨也今付き合ってる人いたっけ?いや、入学してからすでに二桁だもんね。ファーストキスの相手なわけないか」

「俺のファーストキスは幼稚園の頃でさ」

「早っ」

「ああ、早いな」

「といっても、"大きくなったら、いざやくんのお嫁さんに絶対なるね。約束"とかいう夢に溢れるものじゃないんだけどね。五歳の時に誘拐されかけてさぁ。ほら、俺ってば昔から可愛かったからさ。路地裏で抑えつけられて、服は脱がされるは、ヤニ臭い舌にしゃぶられるは本当に大変だったんだよ。まぁ、通りかかった警官に助けて貰ったんだけどね。ああ、世の中生きていくには武器が必要なんだと俺は心底思ったね。そうして、父親が置いていったパソコンで色々な知識を調べると共にスキルを磨き、半年後にはなんて事無い顔で社会復帰していたチカンを社会的に抹殺してやったわけだ。どう、中々忘れられないファーストキスでしょ?」

「……………なんというか」

「………うん、普通ならなんて悲惨な過去なんだろうって同情するけど、その笑顔が…」

「なーに?不服でもあるのかい?」

「「いえ、なにもありません」」













「で、あとはシズちゃんのファーストキス話か。新羅も中々酷な話題を振るよねぇ」

そう言いながら臨也は、実に楽しそうに寝ている静雄の身体を跨ぎ、どすんと腰を下ろした。

「シズちゃん、シズちゃん。おっはよー」

「…………………あ?」

「シズちゃんさぁ、ファーストキスっていつ?というか、キスどころか女の子と手を繋いだのも幼少時代から数えきれるんだよね。聞かなくても知ってるんだけどさぁ、シズちゃんの名誉の為にあえて聞いてあげたよ。あはは、俺ってやっさしー!」

「―――寝起きにゴチャゴチャうるせぇんだよ。いいから、どけ」

低い声で警告する静雄の目は、まだどこか虚ろで眠気を払いきっていないのが良く分かる。

「優しいついでに、シズちゃんがこーゆー話題の時に困らないようにしてあげるよ。ああ、俺ホント優しいよね」

「はぁ?何言っ…?!ちょ、何してんだこのバっ、んう?!」

ああ、これは舌が入ったな。
動揺に浸りきれない頭が、一刻も早くこの場所から非難しろと告げている。逆らう理由もなく、同じく本を畳み弁当箱を綺麗に片付け終わった岸谷の顔を見る。

「行こうか、門田くん」

「ああ。もう変な話題はアイツに振るなよ」

「いや、恋愛小説でのあまりに過度な描写が気になってさぁ」

「それ、恋愛小説なのか」

「そうだよ。好きな女性の気持ちを知る一つのツールとして参考にしてる」

「そうか。健気だな、岸谷」

「献身的と言って欲しいね」

話しながら屋上の唯一の出口である扉へ向かう。
階段を下りる頃、もの凄い爆音が聞こえてきたのは――まぁ、予想内だ。







「死ねよ、クソノミ蟲!!」

「あっは。途中から感じてたくせによく言うよねー」

「うるせぇ!いいから死んどけ、この年中発情蟲が!」

「苦しそうなシズちゃんの顔とか、ムービー撮っておけばよかったなぁ。声も…うん、中々悪くなかった。シズちゃん素質あるんじゃないの?」

「なんの素質だ!いや、いい。言ったら殺す。言わなくても殺すけどな」

「どうせ殺されるなら好きな事言いたいなぁ。まぁ、死なないけどね!」








後日、静雄にあの日にどんな会話をしていたかと真顔で問われた。
ありのままを話したが、あいつは表情を一つも変えはしなかった。

ただ次の日から煙草を吸うようになったのを見て、臨也避けになればいいな、と思わず真剣に願ってしまった。








キスで、殺して
(殺意を抱くには、十分な理由)
作品名:キスで、殺して 作家名:サキ