宇宙人と青春
そう呟いたことを彼女はしっかりと覚えていた。
部室で本ばかり呼んでいるくせに。
そうゆう俺でも忘れてるようなことを。
そして、彼女はなぜか実行に移す。
どこかのやつに彼女も感化されてしまったようだ。
いずれにしても、ここはどこだ?
ことの起こりは極めて単純だ。
俺が珍しく何の用もない日曜日を満喫していた時、妹がやっぱりもノックせず部屋に寝ている俺を起こしに入ってきた。
「キョンくーん!電話だよー」
「うー…誰から」
「あのねユキちゃん!」
年上の人をちゃん呼ばわりするのもどうかと思うぞ。
だが、長門からの電話と聞いて俺は目が覚め、妹から子機を受け取る。
「どうかしたか?」
『9時にいつもの駅に来て』
そう言うと長門は電話を切った。
一方的だ。この時点で長門はおかしかったのかもしれない。
そうそう長門がおかしくなっても困る俺は気づかないふりをした。
しかし、ここで俺がふりをしなければよかったとに気づいときにはもう後の祭りだった。
そして、その後俺は慌てて出かける準備を始めるのだが、妹がシャミと俺のベッドで戯れているのを発見した。一人と一匹を追い出す。たく、いつまでもいるんじゃない。
駅に着くとすでに長門はいた。
いつもどおりに制服だ。たまには長門の私服姿が見てみたいと思うのは贅沢なことだろうか?
「どこへ行くんだ?」
「着いてきて」
長門はおもむろに駅へと入っていく。
遠出だろうか。
電車が来るのを待っている間、聞いてみると長門の大きく遮るものない瞳がそうと言ってる気がした。
二人で電車に乗り、ゆらゆらと揺られている間に景色はだんだんと見たことのないものへとなる。
長門、どこまで行くんだ。
ふと、長門が立ち上がった。ここはどこだ。
長門が降りた無人駅のバックには荒れに荒れている海があった。
すこし、早すぎる気がするのは俺の気のせいか?
「なんで、俺をここに連れてきたんだ?」
誰もが思う疑問を俺は素直に長門に聞いてみた。
何を考えているかハルヒ並に、もしくはそれ以上にわからない瞳を俺は見た。長門が普段何を思考してるかわからない俺だが、長門の小さな表情の変化にはわかると自負してる俺はすこし驚いた。
長門は困惑していた。いや、困惑したいのは俺のほうだ。
「長門?ここに何か気になるものであるのか?」
「ない」
「じゃあ、な」
「あなたが遠くへ行きたいと言った」
「え」
え。え。ええ。え?えええーーーー???!
「あ、そうか…」
俺は長門の言葉を理解したとたん、自分の顔が赤くなるの感じた。ぼわっと、炎が足の指先から全身に行き渡る。
無駄な抵抗だと思ったが、俺はどうしても顔を隠さずにはいられなくて。そんな俺を長門は無表情な顔で見つめている。
俺を見るなと思った。見ないでくれ。
通じたらしく、長門は海のほうへと視線を移した。
「なんで」
俺を連れてきたんだと続きそうになった言葉を、俺は飲み込んだ。
その理由は長門は言った。そうじゃないんだ。なんで、そんな言葉を覚えていて、長門にすれば覚えておくことなんて簡単なことだと思うが、それでなぜ実行に移したかなんだ。わざわざ、部室での独り言なんだ。なんとなく、毎日毎日ハルヒの非常識ともいえる提案に、それでいてなぜかまっとうな提案に、ちょっと疲れてでた他愛もない独り言なんだ。だから、だから、だから…。
「あなたはわたしが…」
言いよどむ長門が珍しくて、ぱっと顔をあげると視線が合う。
あぁ、そうか。長門を見て俺は気づいた。長門も疲れていたんだ。だから、そう、人間がストレスを溜めるように、長門はバクを溜めていてそれをどうにかスッキリさせたかったんだ。真実は定かじゃないが俺はそうだと確信した。
「なぁ、長門。今度は俺がさ、いや。皆でさ行こうな」
海を見たままそう言った俺は長門がどんな表情したかわからなかった。それでも、頷いたのだろうと思う。それが、俺の長門だと思うんだ。
今度はさ、むかえにいってやるよ、長門。