滑稽な愛
人間というものは貪欲で何処までも欲望に忠実だ。
実に滑稽。それでも俺は人間が好きだ。
無様でみすぼらしい人間が大好きなんだ。
「シズちゃん」
「なんだよ」
ベッドの中で一緒にごろごろしながら声を掛けると何とも素っ気ない返事が返ってきた。
「俺を殺してよ」
「…何言ってんだ手前、」
「殺して」
シズちゃんが息をのんだ。
俺が本気だって解っているのだろう。
「もしも、俺が手前を」
「もしも、なんてシズちゃん。そんなものこの世の中には存在しないんだよ。ねえ、だから殺してよ。俺を殺して、一生愛して?」
嗚呼、滑稽だ。
俺が?シズちゃんが?…きっと両方だ。
「永遠の愛なんて、さ。漫画とかドラマとかの中にしかないんだよ。人間はいずれ飽きる。好きとか愛してるなんていう感情は一時のものにしか過ぎないんだ。だから、シズちゃんに対する感情も憎悪に変わる可能性だってあるんだ。…俺は、それが怖い…。シズちゃんに嫌われるのも、シズちゃんを嫌いになるのも。ずっと一緒に居たいんだ。それこそ、永遠に…。だったら今、シズちゃんに対する愛が本物のうちに俺を殺して。そうすれば愛は永遠だ。お願い。」
ねえ、俺を殺して?
シズちゃんの手が俺の首に伸びる。
「…」
ぐ、と力が籠る。
「愛してる」
「薄っぺらいよ、シズちゃん。そんなのじゃ、駄目だよ。死こそが愛を証明するんだ。…そう思わない?」
愛する人の手によって死ねるなら、本望だ。