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フレンドボーイ42
フレンドボーイ42
novelistID. 608
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【完全読み切り】謀

INDEX|1ページ/1ページ|

 
 「僕らの目の前にそれは確かに存在していて、僕らが想うたび、それは確かに存在している」
 創造神アルセウス。それを語るその少年。名前をコウキといっている。彼がなにを望むのか私には全く分からない。否、分かるが分からないとしかいえない。彼にはそのようなことがいえないほど恐ろしく濁った目をしていた。
 「最近ジュンとはうまくやっているの?」
 「・・・まあね」
 「そうか」
 かつて彼は私の幼なじみであるジュンと決闘した。何のために?プライドでもなく、強さの孤児でもなく、何かのライバルというには衝突が少なかった。

 彼とジュンは、私を求めて決闘したのだった。

 #

 「幼なじみの奴と必ず結ばれるなんていう訳じゃないはずだ、そう思って挑んだ決闘だった」
 そう彼は語る。
 「僕は君にあって、すぐに君に惹かれてしまった。君を僕の手に抱きしめたかった。しかしそれには障害があった。彼、すなわちジュンが目の上のたんこぶだった。彼は強くしかも君とずっと一緒で、君のそれまでの記憶の中で、ジュンの存在は他の誰よりも大きかった。加えて君は彼に心惹かれていた。彼は暑く、悪には屈しない奴だった。僕みたいにギンガ団に屈することも、悪事に手を貸すこともなかった。彼はある意味で、パーフェクトすぎたんだ」
 そう、パーフェクト、だった。ジュンはいつでも悪は許せなかったし、私が困っていれば助けてくれた。彼がいなければ私はすでに死んでいたかもしれない。もしくは捕まって今頃嫌らしいことを強制されていた可能性すらあるのだ。資金集めのために、ギンガ団はそれこそ暴走している輩もいるにはいたのだった。
 私はそういうことから、いつしか彼をそれまでより強く想うようになった。彼を今まで「ともだち」だと想っていたけれど、「ともだち」なんていう簡単な言葉ではすまされないほど、彼に惹かれていた。
 しかも彼もまた、私を想ってくれていた。彼は私が恐怖にふるえるのをみて、ぎゅっと抱きしめてくれた。私と彼の距離は縮まっていく。それはコウキにとっては耐えきれないことだったのだろう。
 そして、まさかと思う行動をとった。自分の父親だった、研究員に扮して様々な研究成果を盗みだし、活動していたギンガ団ボス、アカギを利用し、破れた世界への扉を開いた上で、彼をけ落とし、ジュンとの決闘の場に利用したのだ。
 一歩間違えればどちらかが死にかねない場所で。
 しかしその決死の覚悟をとしてもなお、ジュンには勝てなかった。コウキは、そして身を投げようとしたあげく、そこにいたシロナさんによって救出された。

 #

 「あなたは・・・本気で」
 「本気じゃないならなんだっていうつもりなんだよ」
 「・・・」
 「僕は・・・彼に負けてしまった。許されるべからざる事だ・・・」
 彼はとりつかれていたんだ。ここまでほどに。私は・・・この少年を・・・止めなきゃいけない。でもなにもできない。指をくわえてみている他ないのだろうか。
 「おい」
 不意に後ろで声がする。
 「おまえまだやる気だったのか」
 「何か問題でも」
 「ありすぎて困る」
 二人がまた、対峙した。
 「・・・君がもし止められるなら、止めてみればいいさ・・・どうせ無理だよ。最終的な勝利をつかみとってみせる」
 彼がやろうとしたこと。神をその手に掌握して、その力で私を含むすべての人の心を書き換えること。彼が頂点に立ち、彼自身が殺した父親の夢を継ごうとしているのだ。
 「じゃあね」
 彼は飛び去ってゆく。

 #
 
 私がジュンに抱かれながら泣いていたのはどうやら数時間に及ぶらしい。それでも止まらないこの涙。
 「ヒカリ」
 「・・・ジュン・・・」
 「・・・俺のこと、信じてくれるっていったよな」
 「うん」
 「なら」
 彼は、私を抱きしめる手をさらに強くして言う。
 「あいつを止めてやる」
 「!ジュン・・・」
 「おまえ、あんな奴に嫌なことされたいのか」
 「でも・・・ジュンは・・・」
 「心配しなくていい」
 彼は強気だった。
 「おまえを俺が泣かせることだけは・・・ゼッテーにしねえ」