コートの中で停滞中。
この前会った時欲しいって言ってたのをたまたま思い出して、
偶然にも懐に余裕があったから、なんとなくちょっと買ってみようかなって気に、たまたまなっただけ。
…なんか不自然じゃね?あれ?ってか俺たまたまって何回言った?
目的地に着くまでの短い距離を歩きながら先程から何度となく繰り返した言い訳をもう一度頭の中で反芻する。
季節はまだ冬の真ん中を過ぎた辺りのところで、いくら南といえどお世辞にも暖かいとは言い難い。
と、いうか南だからこそちょっとした寒さも身に応える。自分はそういう体のつくりになっているのだ。
舗装された畔道を横切ってとりとめのない事を考えた。
しばらく訪れていなかったが、こうして歩いてみるとこの辺りも随分変わったものだ。
風景も、人も、時と共に移りゆくもので、だからこそ、その中で変わらないものがあってもいいんじゃないかと思う。
それをこうやって形に残そうとするのは我ながら女々しいかも…って、別にこれはそういう意味じゃなくって。
なんとなく偶然に。
そう。それだけ。…やっぱ変に思われるかな……。
こうやって贈り物は結局、今日もポケットの中。
作品名:コートの中で停滞中。 作家名:shelly