白い人
どこまでも、ひどいひと。
「俺じゃあ、いけませんか」
「いけなくは、ねえがなあ」
(いかんせん、お前は綺麗過ぎるんだよ)
(何ですか、それ)
「お世辞にも、程がある」
(ひげを生やして、眼鏡掛けた、くたびれたおっさんに対して、)
「過ぎた言葉、でしょう?」
「それでも、お前は綺麗だよ」
(意思の強いその瞳も、凛とした顔立ちも、何より)
(心、が)
「心が綺麗だ」
「何を、言うかと思えば」
嗚呼、本当に。
「酷い人、」
(慈悲深いフリして何処までも俺を遠ざけて、自分は奈落へ落ちていく)
白い人
(どこまでも空っぽに近いひと)
(ねえ、貴方は本当にどこまでも優しくて、綺麗で、ずるい人ですね)