伝えない気持ち
でもこれは、決して伝えてはいけない気持ち。
始めは、ただのバイト仲間だったんだ。
同じキッチン担当だし、同い年だし。
背が高くて、無口だけどやさしくて、働き者。
轟さんのことが好きなのは、すぐに分かった。
誰が見てもあきらか。
分かってないのは轟さん本人くらいだよねぇ。
佐藤君、可哀相♪
なんて思いながら、それでも割と応援してたんだ。
でもいつからか、二人が一緒にいる姿を見るのが、辛くなってきてた。
最初は、僕も轟さんを好きになっちゃったのかと思った。
でも違った。
僕は、自分の気持ちにそんなに疎くない。
ショックだった。
同性の佐藤くんを好きになったことよりも、決して実ることがないという事実がショックだった。
だって佐藤くんは、轟さんが好き。
どうして、佐藤くんを好きになってしまったんだろう。
今まで、同性を好きになったことなんてなかったのに。
佐藤くんが轟さんを好きなことは、ずっと前から知ってるのに。
同性に好かれるなんて、嫌だろうな。
気持ちを知ったら、僕を嫌きらうだろうか。
気持ち悪く、思うだろうか。
嫌われたくない。
嫌われたくないよ…。
だから、僕の気持ちは決して伝えることは出来ない。
伝えないから
伝えたりしないから
せめて
好きでいさせてね…