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チョコレート
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novelistID. 7958
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ある日のこと~伝えない気持ち2~

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伊波さんの男嫌いは、ホント困る。



「それじゃ、お先に失礼しま~す」
今日は轟さんは早番。相変わらずの、ほんわかした笑顔を振りまいて帰って行った。
あれ、今日この後のシフト誰だったかな?

「えーっと、シフトシフト……」
「伊波来るぞ」
「!!!………佐藤くん、今日、小鳥遊くんは……?」
「休み。」
「!!!!!!!!!」
自分でも、血の気が引いていくのが分かる。
小鳥遊くんがいないと、僕が殴られる確率が上がるんだ。


「ウソっ!!」
「ウソじゃねぇよ。お前、ちょっと伊波にビビり過ぎだろ」
だって………
「だってあのパンチほんとに痛いんだよ!?」
「!!……泣くなよ…」


で、僕は今、ひたすらキッチンに籠もっている。
ここにいれば、伊波さんと鉢合わせる確率は俄然下がる。

「僕は今日、キッチンから出ないから!!!」
「ハイハイ…」
僕の宣言に、若干呆れ気味の佐藤くん。
でもいいんだ。ほんとに殴られるの嫌だし、それに、ここにいれば佐藤くんと一緒にいられるから。


それからしばらくは夕飯時で店は忙しくなり、僕は伊波さんがいることすらすっかり忘れていた。
そして、今はちょっと落ち着いてきたところ。
佐藤くんは相変わらず調理中だけど、僕は手空き。うふふ♪

「今日は平日の割りに、結構忙しかったね」
「そーだな。ま、いつもこれくらいでもいいけどな」
「あはは、そうだね。いつものんびりしちゃってるもんねぇ、うちの店♪」
「だな」
「僕ちょっと、店内の様子見てくるね」
「あ、オイ相馬―っ!!」

「きゃああああああああああああああああああああっ!!!!」

キッチンを出ようとした僕は、ちょうどそこを通りかかった伊波さんに遭遇したのだった…。
時すでに遅し。殴られる!!!!!!!






………………………あれ?衝撃が来ない。
っていうか、ぬくもり?え?……ちょっと、これって…………

「大丈夫か?相馬」
「佐藤くん!?」

抱きしめられてる!?なんで!ど、どういうこと…!?
伊波さんは…?

「ご、ごめんなさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!!!!」

猛ダッシュで走り去って行った。


えっと、つまり、殴られそうになった僕を、佐藤くんがかばってくれたってこと…だよね。
佐藤くんの腕の中、暖かい。広い胸、力強い腕。このまま、縋りついていたい…。
ってそうじゃなくて!

「佐藤くん大丈夫!?僕の変わりに殴られたりして」
「ねぇよ。大丈夫かって、俺のほうが聞いてんだよ」
「だ、大丈夫…!佐藤くんが庇ってくれたから」
「相馬、顔が赤いぞ。やっぱどこか痛いんじゃ」
「大丈夫!!」
「……そっか。なら良かった」

そう言って、僕の頭にポンっと手を置いて、そのまま調理に戻っていってしまった。



どうしよう、胸の鼓動が収まらない。きっと、まだ顔も赤い。
だって、嬉しくて。嬉しくて。嬉しくて。
庇ってくれた。全身で。抱きしめてくれた。あの腕で。

こんな機会、普通じゃ訪れない。
これは、伊波さんに感謝かも…?