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かわることば

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「また君?」

 迷惑そうなトーンで響いた声に、俺は瞑っていた目をうつらうつらと開いて、俺を見下ろして立つ雲雀さんを見た。
「あれえ、雲雀さん帰ってたんですかー? お帰りなさい」
 よろよろとベッドの中から這い出して、任務お疲れさまでしたと微笑めば、雲雀さんはあからさまに疲れたような溜息をつく。
「君からの任務のせいで疲れてるんだ。其処、どいてくれない?」
 右手だけトンファーを持って、ぽこぽこと俺の頭を叩く。
 殴るとか、殴り飛ばすとかまではいかないあたり本当に疲れてるのだろう。俺は雲雀さんに任せた任務の内容を思い出して、悪かったかもと思う。……だけどトンファーで叩かれ続ける頭は地味に痛い。
「雲雀さん、頭痛いです」
「じゃあ其処どいて。僕が寝るんだから」
「はい、どうぞ」
 クイーンサイズのベッドの真ん中に寝てたのを端に寄れば、今度は殴るの力加減で、思い切りトンファーでポカリとやられた。
「いってー!」
「誰が僕の場所を開けろって言ったの。君にベッドから出ろって言ってるの」
「えー!」
「成人した男がえーとか言うな」
「だって……」
 ずきずきと痛む頭を押さえて俯けば、雲雀さんが溜息をつく気配が分かった。
 うん、俺だってわかってる。いい加減雲雀さんがキレてもおかしくないくらいまで来てる事はわかってるんだ。
 あ、頭タンコブできた。これで三つめ。

 恐る恐る顔を上げれば、呆れた顔をした雲雀さんは、それでも今日は何? と尋ねてくれた。
「お腹痛くなっちゃって。休みたいって思ったら、ちょうど雲雀さんの部屋の前だったんです」
「だったら駄犬に言いな。すぐ医者でもなんでも呼んで世話やいてくれるじゃないの」
「お腹痛い時は静かにしてたいじゃないですか!」
「……で」
「はい?」
 雲雀さんとの会話は難しい。かれこれ十年くらいの付き合いにはなる筈なんだけど、いまだに雲雀さんとの会話の成り立ちは微妙だ。昔に比べるとだいぶ成功率あがったけど、今のは全然分かんない。何に対する……で?
「で、今腹は?」
 で、腹? ……あー、お腹痛くないかってことかな?
「もう痛くは、ないです」
「そう」
「はい!」
「じゃあ、いいね」
 雲雀さんは言葉と同時に俺のワイシャツの首根っこを掴んで、猫みたいに持ち上げた。

 すご、力持ち! そして大分苦しい。

 そしてそのまま、俺が用意して、勝手に忍び込んで寝ていたボンゴレの雲雀さんの部屋の扉を開けると、ぽーんと部屋の外に投げ出された。
 顎から突っ込んで、勢いでくるんと前転。着地以外は成功。
 軽く目を回した俺の背中にジャケットが投げつけられて、振り返った時にはもう雲雀さんの扉は閉められていた。
 ガチャリ
 ついでに鍵まで閉められて、二回目の侵入も阻まれた。


「毎度毎度、仕事サボってご苦労だなー、ボス」
 締め出しをくらったショックに項垂れる間もなく、廊下の向こうから聞こえた声に、俺は顔を向けた。
「この前は寒い。その前は腹減った。退屈、眠い、面倒くさい、気まぐれ……だったか」
 愉快そうに笑いながら、相変わらず気配もなく廊下に立っていたリボーンは、靴音も立てずに俺の傍までやって来る。
「なんだよ。仕事なら終わりにして来ただろ」
 廊下に座りこんだ俺のすぐ目の前に立つリボーンを睨みつければ、リボーンは心底呆れたように溜息をついた。
 雲雀さんもそうだけど皆溜息つき過ぎ。幸せ逃げても俺知らないからねー。
「ああ、仕事は終わらせたんだから文句は言わねえ。でも毎回毎回同じことして追い出されて、いい加減学習ってもんはねーのかお前は」
「いって!」
 銃のグリップを握る綺麗な手が、俺の額を思いっきり弾く。
 ホントに痛い。なんでこいつのでこピンはこんなに痛いんだ。
「だってさー。雲雀さんの隣で寝てみたいんだもん」
 なんでだかよくわからないけど、きっとこれは超直感。絶対快適な寝心地だって、俺の中の何かがビンビンと告げている。
「んで、毎回理由付けて忍び込んで追い出されて、か?」
「ガード堅くてさ。あんな広いベッドで寝てるんだから半分貸してくれたっていいと思うんだけど」
 唇を尖らす俺にもう一度溜息をついて、リボーンはぐいと俺の顔に綺麗な顔を近づけて来た。
「な、なに?」
 そんな綺麗な顔が近くにあるとドキドキしちゃうんですけど、俺。
「一緒に寝られるとっときの言葉、教えてやろうか」
「え? なになに? 知りたいです先生」
 そう言えばリボーンは雲雀さんと仲良しだった。そうだ、雲雀さんの事ならリボーンに聞くのが一番だった!

 ワクワクと返した俺に綺麗に微笑んで、リボーンは近かった顔をさらに寄せて、俺の耳元で呟いた。
「抱いてください、って言えばいいんだ」
「ちょっと! 何言ってんだよ!!」
 言い終ると同時にふうと耳に息を吹きかけられて、全身に鳥肌が立つ。とても小学生の言う言葉じゃなくて、慌てて身体を突き放そうとしたら、俺が身体を押す前にリボーンはふわりと離れて行った。
 押そうとした力は空回り。勢い余って再び顎から廊下に落ちた俺は、おもしろがっているリボーンを思いっきり睨みつけた。
「そういう事言うなよ! 冗談でもきついぞ」
「俺は何時でも本気だぞ」
「余計立ち悪いわ!」

 俺はよろよろと身体を起こして、ワイシャツとズボンについた埃を払う。雲雀さんに投げられたジャケットを手に、よろよろと雲雀さんの部屋の前を後にした。





 さてさてここで問題です。
 寒い。
 腹減った。退屈。
 眠い。面倒くさい。気まぐれ。エトセトラ、エトセトラ。
 これら全てと言いかえられる、とってもシンプルな二文字はなんでしょーか。

 それが分かれば沢田綱吉は幸せになれる、はず。
作品名:かわることば 作家名:桃沢りく