それゆけ僕らのセンスゼロ兄妹
「は、はい」
「このルキア、決して兄様の手を煩わすことのないよう努力致します」
「駄目だ」
「お前のような未熟者が前線に立つなど朽木家の名折れとなる」
「私自身の未熟さは、重々承知。ですが、少しでも兄様をお役に立てるよう……」
「二度は言わぬ」
「速やかに立ち去るがよい」
「立ち去りたくとも、戦闘はもう始まっておりますが」
「何、だと……!?」
白哉が後ろを振り向くと、見覚えのある少年&青年二人。
「あれは日番谷、ん?隣の者は確か草冠と申したか。
十番隊隊長ともあろうものが、謀反をおこした者と行動を共にするなど……
いや、確か、かの者は消滅したはず・・・」
「ルキアなんだこの戦いは、この組み合わせは」
「神の仕様です」
「仕様、だと……!?よく意味はわからぬが、
つまり我々に選択の余地はないということか?」
「そのようございます。 舞え。袖白……」
「待て。まだ始解程度しか身に着けておらぬ未熟なお前の技など
通用するはずもあるまい。ここは私が……」
「あの、兄様、後ろ……」
ドゴ!
まずは日番谷が、白哉の男としての絶妙な位置に蹴りをかます。
「十番隊隊長とあろうものが、同じ隊長格に、不意打ちとは誠に卑怯な……、
よほど私を怒らせたいと見える。ならば、その目で確かめるがいい。
誇りを傷つけるということがどういうこと……」
ドコドコドゴ!!!!!
次は草冠の蹴り→パンチ→蹴りのコンボ。
こんな攻撃、ソウルソサエティであったか?
「くっ!」
さすがの白哉といえども、隊長格2人の直接攻撃は堪える。
、
「兄様……!」
ルキアが白哉の元に駆け寄る。
この展開にとてつもなく嬉しいデジャヴを感じるが、それを億尾にも出さぬのが朽木白哉クオリティ。
痛みを必死で堪えながらもちゃっかりルキアの腕をとり、
「ふっ、このような瑣末な攻撃で力を使い果たしたと見える。反撃だ、ルキア」
とクールに装う白哉。
ちなみに白哉のHPの棒線はすでに真紅に染まっている。
ルキアだけならず、白哉以外のすべての者がそれに気づいているが、
そっとしておくのが人情というものであろう。
「そうですね、朽木家……いいえ、「センスゼロ兄妹」の名にかけて……!」
「センス、ゼロ兄妹……?」
「はい」
「誰だ!そのような名をつけたのは!」
「私にもよくわかりませぬ」
とかなんとかそんな問答をしている2人に、後ろより「氷輪丸ー!」という声が響く。
「奴め、卍解をすると見える。姑息な・・・お前は下がっていろルキア、邪魔だ」
「下がれません」
「何……!?」
「何故だかわかりませぬが、ここより後ろには下がれないのです」
ルキアが足でコンコンと後ろを叩く。
白哉は思う。
なぜだ? そういえば、稼動範囲がいつもよりやたら狭く感じる。
というより、さっきから何か見えざる力が自分を動かしているような気がする。
しかし、朽木家第二十八代当主が何者かに操られるなどありえない……!
ならば、稼動範囲を確かめるべくやるべきことは一つ!
白哉は夜一との瞬歩で鍛えた脚力を使い、真上めがけて思いっきり跳躍した。
ゴッツーン!!!
飛び出る火花。
落下する自分。
それを崖下で無言で見つめる日番谷・草冠・ルキア。
「おのれ!逃がさぬよう結界を張り巡らすとは誠に卑怯な……! さてはかの者共は、まだソウルソサエティを征服せんとする野望を抱くか!」
目から星が出ようとも、悶絶したいほど恥ずかしくとも、
努めて冷静に耐えかつ朽木家に伝わる受身で軽やかに着地し、さらに檄を飛ばす。
それが朽木家第二十八代当主・朽木白哉である。
「いえ、実は私達がラスボスです」
「らすぼす?それは敵役ということか?
私はそのようなことは聞いておらぬし、理由もないぞ」
「それが仕様というものです」
いつもより妙に冷静なルキアが気になるが、どうやらここは戦うしかないようだ。
しかし、ここでルキアに戦わせると、決して前線に出さなかった
今までの自分の根回しがまるっきり無駄になる。
「まあよい、お前はとにかく私の後ろにいろ。未熟な者が下手に動くと迷惑だ」
「承知致しました。あ」
ルキアが「後ろ」と呟く間もなく、日番谷&草冠コンビの氷輪丸2対が、
思いっきり口をあけて、センスゼロ兄妹を待ちかまえていた。
その後のことは、多くは語るまい。
「クッ!」
「よほどその命いら……」
「千本さく……(ドゴ!)」
と漢・朽木白哉は己のHPが0になるまで義妹を守り抜きましたとさ。
おわり。
作品名:それゆけ僕らのセンスゼロ兄妹 作家名:梶原