その感情の名前、そして意味
君が目を伏せて薄く笑う仕草や感情のままに怒る姿。
その全てが俺の胸を締め付けて。
嗚呼、俺の事を考えてくれているなんて思えて。
なんて言えばいいのか解らない。
こんな感情は初めてだ。
ねえ、シズちゃん、君はこの答えを知っている?
「シズちゃん」
「ん」
「最近シズちゃんといると苦しい」
「だったら離れればいいじゃねえか」
「そうしたらもっと苦しいじゃない」
知るかよ、と煙草を取り出すシズちゃん。
なにそれかっこいい…。
煙草吸うとか、大人みたいだ。
俺も大人の筈なんだけど。
「なに笑ってんだ気持ち悪ぃな」
「ふ、酷い事言ってくれるね。…シズちゃんのこと考えてた」
「は、そりゃどうも…っおい」
「ちょっとらけ…」
言うが早いか俺は吸いかけの煙草に口を付ける。
「…、苦い…」
思い切り吐き出した煙は、白かった。
「手前みてえな餓鬼には早えよ、莫迦」
はにかむように笑った。
「…じゃあ俺が大人になったら教えてね」
この感情の名前を。
作品名:その感情の名前、そして意味 作家名:89