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三月

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『明日選抜見て研究するけど、お前も参加な』
 夜、阿部からメールが来た。その文面を読んで、ホントに阿部って野球が大好きなのね、と思う。
 今日から春の選抜が始まった。今日は朝から野球部の練習だったから、もちろんテレビの中継は見られなかった。阿部はバッチリ録画予約してきたって、なんか自信満々に言ってたけど。たぶん、練習終わって家に帰ったら早速見たんだろうな。
 そして、明日は練習が休み。阿部は、明日は朝からずっと見るって張り切ってた。オレも試合が気になることは気になるけど、でもたまの休みは、野球から離れた一日を過ごしたい。というより、せっかくの春休みなんだから、昼くらいまでゆっくり寝たい。だから、後で試合結果詳しく教えてね、と言っておいた。
 なのに、なぜか阿部から選抜観戦のお誘いメールが来た。しかも、なんか断り辛そうな誘い方してくるし。
 オレは少しの間液晶画面とにらめっこをすると、すぐに返事を返した。
『いいよ~』
 やっぱりオレも野球大好きだし、他県の学校の試合が見られる機会なんてそうたくさんはないし、色々と勉強になるし。
 それに、阿部と一緒っていうところに、多少ならずとも魅力を感じて、すぐにオッケーしてしまった。


 オレの返信の後少しして、また阿部からメールが来た。
『悪いんだけどオレの家弟がうるさいから、大丈夫だったら水谷の家に邪魔してもいい?』
 そういうことか、とちょっとがっかりした。弟くんがうるさくて集中できないから、オレん家でゆっくり見させて、ってことなのか。オレはてっきり、阿部もオレと一緒に見たいのかな、なんて思っちゃったのに。オレのときめきを返してほしい。
 でも、他の皆じゃなくてオレに連絡くれた、っていうのは、ちょっと嬉しいかもね。
 明日は母親はパートの日だし、姉ちゃんは旅行中だから、日中はオレしかいない。だから、阿部が家に来るのだって全然平気。
『大丈夫~。何時に来る?オレは何時でも平気だよー。駅まで迎えに行けばいい?』
 だからそう返事をする。よかったね、阿部。これで心置きなく試合が見られるよ。少しはオレに感謝してよね。
 阿部が明日家に来るって思ったら、なんか急にわくわくしてきた。リビングでテレビ見るけど、もしかしたらオレの部屋にも来るかもしんないし、ちょっと部屋きれいにしとかなきゃ。あと、朝のうちにコンビニでお菓子買ってこないとな。
 明日は朝から夕方までずっと試合だから、一日中阿部と一緒なんだ。嬉しいけど、ちょっと緊張もする。オレ阿部と二人になると、なんかちょっと話に詰まっちゃうこともあるし。
 でも、明日は野球っていう強い味方がいるから大丈夫。何かあって気まずくなっちゃっても、阿部に試合の解説でもお願いすれば、すぐに機嫌良くしてぺらぺら始めてくれるしね。阿部ってば野球バカすぎだからなー。


 少し経ってから来た阿部のメールは、
『悪いな。9時くらいでも大丈夫か?東口のマックんとこで待ってる、よろしく』
ということだった。最初に来た俺様なメールとは大違い、まるで阿部ってばいい奴なんじゃん、と勘違いしちゃうような文面だ。それなら、最初からこういう風に誘えばいいのに。
 でも、ぶっきらぼうにしか誘えないとこが阿部らしいとこなのかな? 阿部も結構子供だな、かわいいとこも持ってんじゃん。
 とにかく、明日は晴れてほしいな。オレもすげー乗り気になってるのに、雨が降って試合が中止にでもなっちゃったら、がっかりだもん。
 今日は夜更かししようと思ってたけど、明日に備えてもう寝よう。もしかしたら、明日が楽しみで眠れないかもしれないけどね。
作品名:三月 作家名:ぺろ