夏惚けしりとり
上からは輝く太陽が下からは焼けたアスファルトが熱を放つ。
近藤が丁度真上の空、
陽射に機体を煌めかせながら南へ向う飛行機を眺めながら呟いた。
「暑いな、オイ」
蒼を越えて白に近い夏の空。近藤はその眩しさにに瞳を細める。
「ホント暑ちいですねィ」「全くだよ、俺ァ溶けそうだぜ…」
「遠慮しないで溶けて無くなって下せいよ土方さん」「ウルセーよ!」
「さっきから暑いしか喋ってねえよな、俺達。だから余計に暑いんじゃね?
しりとりでもしようぜ負けたらアイス奢ること!」
乗った乗ったと二本右手が上がる。
「まず俺からいきやすぜィ」
沖田が口角を上げてスタート。ジャンケンで決めた。沖田、近藤、土方の順。
「しりとり」「リンゴ」「ゴリラだが可愛いアンタが大好きだ」
「黙って消えてくれや土方コノヤロウ」「馬」
「マジで早く俺のになってくれねえかなあって、
毎日お星様に願ってから寝てるんだけど」
「どうでもいいが土方オマエホント可哀相な奴だよ。
誰か救急車呼んでやってくれぃ」
「…総悟、い?れ?どっち?」「じゃあ、れで」「冷蔵庫」
「近藤さんが俺の事好きだって云ってくれたら、俺ァもう死ねるね」
「寝言は寝てから吐かせ、暑いのに全く鬱陶しい奴だぜィ、
近藤さんの言葉の前に俺が此処で永遠の眠りにつかせてやろうじゃねーか」
「ちょっと休憩」
近藤は立ち止まると道端ガードレール脇の自動販売機に千円札飲み込ませて、ボタンを押した。
自動販売機の横には誰が植えたでもない野良の向日葵が色を添えていた。
がこんと鈍い音を立てて続けて落ちるウーロン茶の缶三本。
土方と沖田に一本ずつ手渡すと近藤は手元に残った缶のプルタブを引く。
近藤の手の中の缶の目方いっぺんに半分減った。
「こっから順番逆回転な」「何だった?」「かだよ、トシ」
「格好つけても仕方ねえ、格好悪いぐらいにアンタに惚れてるんだよ」
「良く云うよ」「嘘じゃねえよ!」
「順番守ってくだせえよ、土方さん。次は俺ですぜィ」
沖田が土方の言葉を遮る。
「良くもまあぬけぬけと吐かすもんだ、アンタぁ云うばっかりで形がねえ、
近藤さんが信じられねえのも道理だ」
「…だったら近藤さん。ラブホ行こーぜ、
俺の本気みせてやろーじゃねえかってんだ!」
丁度道の向こうに見えた極色彩の外壁を持ち玩具の城みたいな形状をしたダサいネーミングのホテルを指差しながら土方が叫ぶ。
「…駄目だこりゃ」
「奴ァいかれてますぜ、近藤さん」
「あ!」
近藤が嬉しげに叫び、土方がニヤリと笑った。
「オマエ負け〜!総悟。一っ走りして角のコンビニでガリガリ君三本な!」
やっちまったぜと天を仰いだ沖田の瞳に空が映って、雲が浮かぶ。