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ハッピーバースデー、愛する君

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 僕にとって、誕生日等どうでもよかった。
 昔は名前なんてなかった。呼び名と言える物はただの数字で、物のように扱われる日々。右目を抉られ、嫌な物をそこに埋め込まれた。何も知らない子供だった僕は、必要のない知識をそれによって与えられた。憎しみ、悲しみ、怒り、それらが入り交じって、僕はついに大人達を殺してしまった。手を、汚してしまった。――それが6月9日。六道骸の誕生だ。
 だから僕は、誕生日なんてどうでもよかった。だってこれは憎しみの末に生まれた人間の物なのだ。誕生日よりも、それは戒めのような物。
 だけど、彼は言った。

「おめでとう」

 あぁ、何て真っ直ぐな瞳だろうか。彼の低い声は、僕を貫いて、震えさせる。

「……何故、そんな風に言えるんですか?」
「何故? 君の言っていることがよく判らないな。僕の大切な君が生まれた日。祝うのは当然だと思うけど」

 そんな自信有りげに言われると、僕もどうしたらいいか判らなくなる。
 あの日沢山の罪を背負った僕が生まれた。人間を憎み汚いとする僕が、誰よりも一番汚いはずなのに。彼はそんなことは少しも気にしていないなんて。
 君は本当に愚かですね、と笑いたいのに声が出ない。

「馬鹿。何泣いてるの」

 彼が僕の腕を掴み引き寄せ、僕を抱いた。やはり肉体派、僕よりも引き締まった腕で、強く抱き締められる。
 泣いていたなんて、彼に言われるまで気付かなかった。でも気付けば次々と溢れ出す。何故自分が泣いているのかなんて判らない、兎に角何かが僕の胸を握り潰しているみたいだ。
 そんな僕を、彼は黙って抱き締め、静かに見つめ合って、キスをした。
 最初は優しく、次は激しく。呼吸も出来ない程に啄まれ吸われ彼の唾液と僕のが混ざり合い零れていく。
 彼はとても器用だから、いっぱいいっぱいの僕とは違って、キスをしながらシャツのボタンを一つ一つ外していった。
 あぁ、彼に奪われる。

「んっ……はぁ……」
「……大方君のことだから、捻くれた考えでも抱いたんでしょ」
「ぁっ……んぁ、ぁ」
「馬鹿だよ、本当に。素直に喜べばいいのにさ」
「んゃっ、ひば、くぅ……っ」
「僕は君がいて嬉しい。君がいなきゃ僕は愛も知らずに生きていただろうね。だから君の誕生日を祝うのは、当然のことなんだよ」
「ふぁっ、ゃっ、ぁっ…あぁっ」

 彼の言葉が、僕を抱き締める。指先から、確かな愛が伝わる。
 僕は呆気なく欲を吐き出して、痺れた思考で考えた。あぁ、この人に会う為に、僕は生まれたのかもしれない。

「――しい」
「……骸?」
「うれ、しい……」

 あぁ、そうか。僕にも人を愛せるのか。人を憎み壊す為だけに生を授かったと思っていたのに。あれだけ神を憎んだのに。
 僕はたった今、苦しい程に彼を愛している。

「君が、堪らなく愛しくて、そう思える自分が嬉しくて、僕は生まれてこなければよかったと、思わずに済んで」
「…………」

 とめどなく溢れていく涙。このまま身体中の水分が涙となって消えてしまいそうだ。
 彼は僕をもう一度抱き締めた。先程よりも、彼の熱を直に感じ、僕まで熱くなる。

「そんなの、僕はとっくに知っていたけどね」

 彼の耳が赤くなっていた。






ハッピーバースデー、愛する君
fin.