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心だけが声

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誰よりも近くにいる気がする。
誰よりも狂おしい痛みの中に俺とお前が存在する。
立場も何もかも全て異なる理由を抱えてるはずなのに。
生き方は同じ、
同じ理由で縛られる
同じ理由を誓ってる
同じ秤を知っている
同じ
生き方を


そう思うのはきっと錯覚。
距離が遠すぎて無意識に望んだ妄想だ。
繰り返すのは声
ただの、剣士の声。
幾度とそれを耳の内で響かせるたびに時折それは変化する。
幼い憧憬と重なりながら、突如消え、又現れ、俺の眠りと共に心の深層に沈殿していく。
残存する孤高の魂に、かすかな祈りをささげながら、俺はまだ望んでいる。
聞きたいと、その声を、まだ、まだずっとまだ聞いていたいと。
祈ることなど似合わないと知りながらも、しかしそれ以外にこの距離を埋める術がみつからない。
波の音を眺めながら、変化していく怒鳴り声。


「た た か い な さ い !・・・・」


剣士の声。
俺の何かが消えうせる。
心の砦が崩れる音を聞きながらも俺はそれすらも受け入れていいと、自分でも怖いほど寛容な心理状態を維持しながら
消えうせる残像に
変化する見解に
僅かな微笑すら容赦した。






誰よりも遠くにいる気がする。
剣を抜こうがあちらは逃げる。
幼馴染に顔が似ているから斬れないのだと笑わせる理由を叫びながら奴は又逃げていく。
ふざけんなよ、私を見ろ、私を私は私が私の剣を見ろ、見ろ見ろ見ろ視ろ見ろ私の・・・・!
追いかけていく足が重い理由を知っている。
崩れゆくプライドを支えながら
歯をくいしばるしかする事のない自分を殺しながら
涙すら流せない。
手すら伸ばせない。
伸ばした振りをしているだけだ。
勝てないのだと何処かの心が思っているのだ。気持ち悪い、気色悪い、吐き気がして苦しくて
自己すら苦痛
精神の惰弱
あいつにあってから
ああ、もう、憎い。


誰よりも遠くにいる気がする。
誰よりも狂気の渦中で貴方と私が存在する。
理由も
生き方も
誓いも
束縛も
全て違うのだ異なるのだ重なりたいのだ斬りたいのだ斬られたいのだ殺されたいのだ殺したいのだ憎むべきなのだ
無数の矛盾すら肯定するのは刀であるが故の奇跡。
剣士であるが故に全てを裏付けるこの軌跡。
多くのものを後押しする。
たいがいのものを摩滅する。





作品名:心だけが声 作家名:松屋