無意識の選択
あのひとは、皆に好かれていた。
それは、恋愛だったりそうでなかったりしたけれど、
誰もがあのひとのことを好きだった。
私も、そのひとり。
近いようで遠い、あのひとの「仲間」
それ以上になりたくて、でも、あのひとはそれ以上を作らないと知っていた。
それが出来ないひとだと、知っていた。
…それで良いと、思っていた。
今は、わかる。
私はわかったふりをして、逃げていたんだ。
踏み込んで、今の位置を失うのが怖かった。
あのひとはそんなひとじゃないことくらい、知っていたはずなのに。
怖くて、勇気がなくて、決めつけていた。
誰も選ばない、と。選ぶはずがないと。
……ううん。本当は、今もそうなのかも知れない。
あのひと自身は、誰も選んでいないのかも知れない。
でも、私には感じられてしまった。
だって、…だって、あんな表情、私は見たことないんだもの。
「……好き、です」
嗚呼、もう。
私には、どうしたって言えない。