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【腐向けAPH】あ、喋らない彼が喋ってる。【香氷】

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 「何もかも全て雪みたいに真っ白だから冷たいのかと思った。」
 いきなりイースの顔に無遠慮に触れて無表情に香は言った。初対面なのに全く臆することなく、なんの躊躇いもなく、少し大きな手はイースの頬に触れたのだ。その手は少しだけ冷たかった。びっくりして、反射的に、同い年ぐらいに見える幼さの少し残る青年の顔を睨みつけた。もちろん、上擦った声でである。殆ど身内としか会話を交わさないイースにとって会議の場は少し苦しかった。香ももちろん同じである。だから自分がイースに手を伸ばしたときには正直びっくりしたのだ。何で初対面なのに、どうしてなんだろう。
「な、なななにするんだよ?!」
「えっと、だから言った…的な。雪みたいに白いし、アイスランドって言うくらいなんだから、肌も冷たいのかと思った、それだけ」
「なっ」
「冷たくないんだ。寧ろ俺よりも暖かい」
 両手でぴたりとイースの顔を包んで香はこつんとおでこをくっ付けた。イースの瞳にアップになって姿が映る。きりりとした眉毛と、表情が希薄な瞳、唇だけが動いているような錯覚をするのは気のせいではないだろう。それほどまでに表情に起伏が存在していないように感じた。真っ黒の髪の毛に睫、純白のミルクに蜂蜜を入れたような肌の色、黄金色の瞳。
 スキンシップ過剰な気がしたけれど、なぜか嫌ではなかった。
 本当はそこまで近づくつもりはなかった。けれど気が付いたらゼロ距離だった。額を離して、イースの顔を見る。分かりやすい表情を浮かべていた。眉はすっかり下がってしまっている。雪のようだと香が感じた白い肌は少し赤く染まっていた。色素が限りなく少ないそれが香には酷く遠いものに見えたのだ。けれど、会議中の表情はどこか、切なげで昔の自分に被った。近いと、直感的に考えたんだ。
「…意味分かんない。僕だって出来は一応人間だし、冷たかったら死んでるし」
「初めて」
「僕もあんたははじめて」
「……」
「なんか文句ある?」
「……うそ、前から知ってた」
 必死になるイースを横目で見てにやりとその無表情な顔は笑ったのだ。口角をあげて笑う。なんだ笑うと結構幼いんじゃん。イースは思った。しかしそれも一瞬で、きちんと、真っ直ぐな仄かに金が交ざる眼差しでイースを見据える。イースはその一連の仕草にどこか同じ周波数を感じた。似ているようでどこか違う。決定的な違いは育った環境なのかもしれない。イースは思う。
「…え?」
「見たことある。どうやって声かけようか悩んでた的な」
「なんで、」
「なんとなく、だけど?」
「なんとなくで、いきなり触れるわけ?ちょっ」
 イースが身をすくませて、一歩下がると、追って一歩、香はイースに忍び寄る。じわじわと後ろに寄って壁に追い詰められたイースは少しだけ、背の高い香を上目遣いにみる。やや見下ろした香はあっけらかんと述べた。その言葉に偽りはないだろう。真っ直ぐすぎる。そういう風に近づいてこられると混乱するのだ。自分には決して出来ない距離の詰め方を香はするのである。
「だって、綺麗じゃん」
「は?」
「瞳もきらきらしてるし、真っ白だし、良さそ」
 その下心だらけの言葉にイースの頭はパンク寸前になった。イースに似ているのではない。それ以上に香は、彼の兄に似ていた。唯一の相違点は、自分の肉親ではないことだ。身内に囲まれてその中だけでイースは過ごしてきた。香は外部からやってきた存在だ。それに純粋に興味を抱いたというのもあるだろう。
「もしかしてそれだけ?」
「アーサー的に言うとお近づきになりたいってーの?」
「な、なにを」
「とりあえず、」
「トモダチからやらない?」
「べつに、」
 それにノーと答えられなくて、頷いてしまったのが、ゆるりゆらゆらふたりの付き合いが始まったのである。色素の薄く、淡い彼と金色を放つ彼のふたりの関係。



そうしてはじまった奇妙な関係。