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ファンタジアみたいな

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蒼天に一筋の線が入ったかと思うと、閃光が広がる。
それから一瞬置いてパンッともドンッとも言える破裂音が響く。

その変化に気づいたあるものは帽子を縁を上げてニヤリと笑い、あるものは閃光の光った方角を睨み、あるものは本を閉じ、あるものは買い物かごを持ち直し、あるものはひょうたんを置き、あるものはカメラを構え、あるものは寝返りを打ち、あるものはお茶をすすった。そして、ある者は盛大にため息をついた。
それは幻想郷のいつもの日常であった。

木々の枝から枝へとバサバサと大袈裟な音を立てて鳥が羽ばたく。
鼻腔をくすぐるのは土の香り。そして、背中に伝うのは地面の感触。
むくりと体を起こした日本は辺りを見回して、首をかしげた。
「…一体…何がどうやら…」
会議室にいたはずの己がいつの間にやら緑と土に囲まれている。この不可思議な事態にまったく頭が付いていかない。
それでも、と頭を動かして事態を飲み込もうとする。
数分前は……といっても、どれほど気を失っていたのかは分からないから、実際には数時間経っているのかもしれない…会議室で、いつものメンバーでいつものあまり実りのない会議をいつものように行っていたはずであった。
なにかのきっかけで部屋全体が一気にパーンと白くなり、気づいたらこの有様である。
不可思議な出来事と言えば…と考えると、思い当たる顔が2つほど浮かぶ。
ため息をついた日本は、着物の裾を払って立ち上がる。
スーツを着ていた筈だった姿もいつの間にか和服に変わっていた。
傍にはご丁寧に錫杖が置いてあり、今の姿を見るとどことなく僧侶を思わせる。
「まるでRPGですね」
ひとりごちた後に、ふむ…と続ける。
「セオリー通りにここは聞き込みでもしてみましょうか…」
それからやはり傍に落ちていた笠を拾い上げて被ると、森の獣道を歩き始めた。

暫く歩くと獣道は人の道らしきものにぶつかる。
その道もアスファルトなどで舗装されているわけではなく、人の足で踏み固められてできたような自然の道だった。
その道を辿ると、赤い柱のようなものが木々の間に見え隠れし始める。
森よりこれまで人工物は見かけなかったので、これが初めての人工物であった。
「とりあえずあれを目指しましょうか」
そうつぶやいて草履を進める。
赤い柱を目指すにつれ緑は徐々に少なくなり、いつの間にか森を抜けたらしいと思った頃には赤い柱が鳥居であることが明確に分かっていた。
赤い鳥居を通り抜けると、鳥居の大きさに肩透かしを食らったようなこじんまりとした神殿があった。
参道を進むと、巫女装束の少女がほうきでを動かして掃除をしているのが見えた。
……お掃除を邪魔するのは悪いですし、先に参拝をしてこれからの無事を祈っておきましょう……
そんな暢気なことを考えながら、賽銭箱の前に進み袂から財布を取り出す。
僧侶姿の日本が神社に参拝するのはおかしな光景なのだが本人は全く気にせずに、気前よくちゃりんちゃりんと音をたてて小銭を賽銭箱に放り込んで鈴を鳴らし、二礼二拍手一礼をする。
……何事もなく家に帰れますように……
そんなことを祈りながら振り返ると、ほうき片手に掃除をしていたはずの巫女がすぐ後ろに立っていた。
「あなたっ!」
「っは…はいっ!」
勢いよく声を掛けられた日本が思わず返事をすると巫女姿の少女が、いきなり日本を両手をとる。
その拍子にカランと音を立てて、脇にさしていた錫杖が落ちる。
日本は反射的にそちらを向こうとしたが、ついで少女の口からでた言葉に彼女の目を見る。
「なんていい人なの!これで今日のお夕飯が食べられるわ!」
突拍子もない台詞に呆然としていると少女は次々と続ける。
「このところ全然人なんてこないし、来たと思ってもあいつらのせいで逃げちゃうし、ようやく参拝者がって思ってもお賽銭なんか暫く入れてもらえなかったところにあなたよ。お坊さんみたいな格好してるから、最初はてっきり商売かたぎかしら?早く追い出さなくちゃって思っていたのに、さっきいくら?いくらかしら?いっぱい入れてくれたわよね!もうこれでしばらくぶりに固形物が食べれるわ。固形物っていってもその辺に生えている草やキノコなんかじゃなくてちゃんとしたものよ!ああ、しばらくぶりにお買物が楽しみだわ。本当にありがとう!」
そうまくし立てる少女の瞳は心なしか潤んでいて、彼女の台所事情が心底心配になる。
「あの…」
「何かしら?」
「もし宜しければお夕飯をご馳走させて頂けませんか?」
日本がそういうと少女は目を見開く。
「あなたが神か!」
「いいえ、国です」
日本はそう答えると、少女ににっこりと笑って続ける。
「その代わりと言ってはなんですけど、私に少し力を貸していただけませんか?」
少女はその言葉に日本の両手から手を引き、自分の胸元へと右手を持っていく。それからゆっくりと答えた。
「ええ、もちろん。博麗の巫女に出来うることならなんでも」
「これは頼もしい方に出会えたようですね」
そう日本が微笑むと、少女は傍らで笑った。
「さて、問題に取り掛かる前に夕飯の買出しに行きましょうかね」
「ええ。それには大いに賛同するわ」
であったばかりの二人が隣に並んで買出しに出かける。
陽の光は徐々にその色を茜色に染めつつあるが、その茜に染まらぬ烏が森の方角へとカァカァと鳴きながら飛んでいった。