ヒオウ・ヒナタ~~溺愛魔王と俺様~~
更迭2
「とりあえずどういう事でこうなったか・・・」
「あーそうだよねーそこ、大事だわ、ほんと。」
「なぜ僕と君が。」
「そう、同じベッドで寝ていたか。」
「そこ!?ちょっと、まじめに考えなよっ。」
すかさず突っ込みをいれるヒナタなルックに対し、ルックなヒナタがすっとよける。
「お、相変わらず回避能力は高いねー。ルックの体はー。」
「・・・・・。」
「分かった分かったー。でもさーほんとだいたいなんでルックが僕の横で寝てたのさー?そんなに僕といたかったんかい。」
「・・・そんな訳ないだろ?昨日は君が寝てからすぐ部屋を出たよ。その後はほったらかしにしてたんだけどね。」
「なんだよーひどいじゃんー、ご飯とかはー?起こしてくれたっていいのにー。」
「・・・まったく。相変わらずバカな事言ってるね。今はそんなのどうだっていいだろ?・・・紋章か・・・?」
外見ヒナタのルックは自分の手をじっと見て言った。
そこには始まりの紋章が変わらずついている。
「なんで紋章のせいで入れ替わるんだよー。そんなんだったら今までだってあったはずじゃん。」
「いや・・・最近、おかしかったんだろ?もしかしたらその関係でとか。分からないけど、始まりの紋章が君の負担を少しでも和らげようとしたとか、僕との相性の関係でたまたま、とか・・・。」
「食い合わせみたいなもんか?」
「・・・。」
考えても理由などさっぱり。とりあえずレックナートに相談してみようとの意見が一致した。
「で、あいつはいつ来るのさ?」
「あいつ?ああ、ヒオウ?いちおう今日来る予定だけど・・・」
「こんな状態、あいつにばれたら何されるか分かったもんじゃない。」
「あー、まあ、いたずらも確かに相変わらず好きそうだからねー。」
昨日から何となくヒオウに対するヒナタの口調が?とヒナタなルックが考えていると、バンッとドアが開いた。
「ヒナター?レックナートが多分この部屋だっていうから・・・」
噂をすれば。
ヒオウが勢いよくドアを開けて入ってきた。
そしてベッドの上で顔を合わせていた2人を見つけた。
「何してるのかな?ルック?いい度胸だね?」
それはそれは素晴らしくいい笑顔で、しかし背後は真黒な状態のヒオウが外見ルックなヒナタに向かって言った。
「何って、何のこと?大人げないよ。」
ルックなヒナタがサラッと言った。
「ちょ、何言って・・・」
ヒナタなルックが言いかけたがルックなヒナタが手で口を押さえる。
「シーっ。だってばれたくないんでしょ?だったら演技するしかないじゃん。今の、すごいルックらしくなかった?」
ささやくように、しかもとても楽しそうに言ってのけた。
「ちょ・・・」
「何コソコソと話してるのかな?てゆうか何その手は?ヒナタも何大人しくされるがままなの。」
ヒオウに話しかけられ、ヒナタなルックはびくっとなる。
その様子にヒオウは少し首をかしげた。
「ヒナタ?大丈夫?」
「え?あ、えと、ああ、うん。」
なんとなく挙動不審的なヒナタの様子にヒオウは目を細めた。
「少し紋章のせいで疲れてるみたいだよ。ぐっすり眠っていた様子だけど、一瞬何がなんだか分からない様子だったから僕は様子をうかがってたんだ。それよりもう用事はすんだわけ?」
「・・・まぁね。ヒナタ、ほんとに大丈夫なの?」
「え、あ、ああ。だ、大丈夫だよ・・・。ちょ、ちょっと僕とヒ・・ルックはレックナート様のところに行くから。あん・・ヒオウはここか別のところで待っててくれる?」
「え、なんで?僕も行ったらだめなの?てゆうかルックはどうでもいいじゃない、ついてきたいならついでに来ればいいけど。」
「ついでって何。」
ついヒナタなルックがつっこんでしまう。
しかし一見ヒナタである為、ヒオウがまた首をかしげる。
「ヒナタって、そんなに即座につっこんでしまうくらいルックの事、好きだったっけ?」
「い、いや違っ」
「少なくともあんたよりはマシだって思ってるんじゃない?」
「・・・へぇ。言うね?僕ほど人間出来た奴はそうそういないよ?」
「ちょ、どこが!?」
「ほら、ヒナタもそう言ってるしね?あんたより僕のほうがマシって事。」
ついまたつっこんでしまったヒナタなルックの後に、ルックなヒナタが言う。
いやもう、絶対ヒナタはヒオウにたいして怒ってる。
ルックは間違いないと確信した。
なんだってこんなときに・・・。
何これ、ただでさえ厄介なことになっているっていうのに。僕は痴話げんかか何かに巻き込まれているとしか思えない。
もういっそ、正直に最初から入れ替わってることを明かしてたほうがマシだったような気がする。
目の前ではどんどん悪化していく空気。
ただヒオウを見ると、なんだかうっすら笑っているような気がするのは僕の気のせいだろうか・・・ヒナタなルックはふと思う。
だがそう思ってる時に、とうとうある意味懐かしいとさえ思える光景が。2人の右手が光りだす。
「切り裂き」
「・・・裁き」
って冗談じゃない、ここをどこだと思ってるんだ!?
昔さんざん人の城内で切り裂きをかましまくった奴のセリフとは思えない事を考え、ヒナタなルックは切れた。
使えるはずのない、始まりの紋章が光る。
次の瞬間、ハッとした2人のうち、自分の姿をした方もグラリとしたのを見ることなく、ヒナタなルックはばったりと倒れた。
作品名:ヒオウ・ヒナタ~~溺愛魔王と俺様~~ 作家名:かなみ