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ヒオウ・ヒナタ~~溺愛魔王と俺様~~

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更迭4



「ヒナタ、大丈夫だった?」
「・・・大丈夫だってばー。てゆうか僕はまだ怒ってるんだけどー。」

ヒナタはジロリとヒオウをにらんだ。

「えー、なんで?ルックの前でキスしたから?」
「ばっ・・・そ、それもだけど、ヒオウの実家で!!」
「あー、あれね?なんで?別にいいじゃない。」
「良い訳ないだろっ。近くの部屋でグレミオさんが寝てたんだよ!?恥を知れっ」
「えー。」
「・・・てゆうかいい加減にしてくれない?僕の存在完全に忘れてるだろ?」

ルックが呆れたようにため息をつきながら言った。

ヒナタはハッとなる。
その横でヒオウは忘れてないよ?といった顔つきでルックに笑いかけた。
そのヒオウの顔を見てさらにため息をついてからルックが言った。

「痴話げんかはどこかよそでしてよ。それよりさ、ヒナタ、君、今紋章の具合、どうなのさ?」

痴話げんかと言われて顔を赤らめたヒナタだったが、その後で紋章の事を聞かれて思いだしたようである。
つと首をかしげ何かを確かめるような顔つきをした後で口を開いた。

「んー、なんか楽になった。」
「ほんとにー?良かった。」

ヒオウはニッコリと言った。
ルックは何か考えるような顔をした。

「ねえルック。お前、何か思い当たる事でもあるのかな?さっきから色々ひっかかるようだしね、もう一つとやらの話も聞いてないしね?」
「え、そうなの?ルック?てゆうかもう一つとかって何さ。」

ヒオウとヒナタに見られてルックは黙ったまま、顔を合わせ、しばらくしてから口を開いた。

「いや、僕とヒナタが入れ替わった事は分からないよ。まあ多分だけど、始まりの紋章がそうしたと思うけどね。」
「なんで?」

ヒナタが目をくりくりさせて聞く。

「さっきも言っただろう?多分君への負担をどうにかやわらげようとしたんじゃないだろうか。」
「ああ、食い合わせ?」
「何、ヒナタ、食い合わせって?」
「えー?僕とルックの相性とか・・・」
「もう、それはいいよ。まったく・・・。とりあえず楽にはなったんだろう?。」

さもうっとおしそうにルックがさえぎった。

「えー、なんだよー、ルックてば機嫌悪いのー?」
「うるさい。話が進まないんだよ。でさ、ヒナタ。貧血とかにはなってない?」

ルックがヒナタを見て言った。
とたんヒナタは目をきょときょとさせて困ったような顔をした。

「・・・どういう事?」

代わりにヒオウがルックに聞いた。
ルックはヒナタをじっと見る。ヒナタはふう、とため息をついてから仕方なしにうなづいた。

「僕がヒナタになった時に体に違和感があった。入れ替わった違和感とは違う。何だろうと最初は分からなかったけど・・・」

ヒオウも大人しく聞いていた。

「ヒナタ、君、吸血鬼に咬まれたんじゃない?」
「はぁ?」

大人しく聞いていたヒオウがいきなり何を言い出すのか、というような顔をした。
だがヒナタの顔を見て口を閉じた。

「僕もはっきり分かった訳ではなかったけれども・・・あの感覚はなんとも言い難いね、血が欲しくなるようにはなりたくない。とりあえず怪我してるやつがいなくて良かったよ。」
「・・・どういう事?ヒナタ。」

ヒオウがヒナタをじっと見て言った。

「えっと・・・ちょっと、咬まれちゃった、あは?」

ヒナタは可愛らしく小首を傾げて言ってみるものの、ヒオウにじっと見られて首をすくめた。

「えっと・・・僕の知っている限りでは、咬まれたからといって誰もが吸血鬼にはならないと思うんだよねー?」

少し目をそらしつつ、ヒナタが言った。
だがヒオウは容赦なく続けた。

「何それ、ごまかし?どういう事か、まだ聞いてないんだけど?」
「う・・・」

ヒナタは救いを求めるような目でルックを見た。
ルックはため息をつく。

「まぁね、確かに血を吸われたからといって皆が皆そうなる訳じゃない。せいぜい貧血だけで終わるんじゃない、多少なら。でも、君はそういうんじゃないよね。多分、あきらかにわざと・・・」
「って救いにならねぇー。」

ルックを遮ってヒナタが突っ込んだ。

「何が救いなの?ヒナタ。ごまかさない。僕は惑わされないよ?はっきり君から説明をきくまで諦めないからね。」
「ぐ・・・」

とりあえずまたルックを見るヒナタ。
ルックは何かを言おうとしたが、口をいったん閉じてから、また開いた。

「とりあえず・・・僕は朝の仕事をしてくるから。まぁ、ごゆっくり。」

ヒナタの肩をぽんぽん、と叩きながら踵を返し、そのままルックは出て行った。

「へぇ、ルックも気がきくようになったもんだね。」
「ち・・・。使えねぇ・・・」
「そんな事言わないの。さて、ヒナタ?立ち話もなんだから、座ろうか?」

それはそれは恐ろしい笑顔でヒオウが言った。

どうにもごまかしようがないと分かったヒナタは諦めて大人しくベッドに座った。
ヒオウは椅子を持ってきて、ヒナタに向かい合うように座る。

「で?そうだね、まずは、心当たりがあるならなぜすぐに言わないの?何も分からないようなふりをしてこの塔にまで来て。」
「・・・ヒオウに・・・ばれたくなかったから・・・。でも、でもね、紋章が落ち着かないのは、ほんとに理由が分からなかったんだよ?まさか僕の紋章が僕の為に何かをしようとしていたとか思いもよらないし・・・。だからここに来たのは、ほんとに何か分かればいいと思ったからだよ。」
「・・・。で、なんで僕にばれたくないて思ったの?僕が頭ごなしに君をどなるとでも?」
「ううん、そうじゃない・・・。・・・勝手に・・・僕が勝手にしたことで、ヒオウが何か後悔するのを見るのが嫌だったんだ。」
「・・・そんな気遣いで僕が喜ぶとでも?」
「・・・そだね、うん、思わない。ごめん、ヒオウ。・・・後ね、実はソレがらみでシエラ様に会ったんだ。」
「げ、始祖様、に?」

おずおず、と言ったヒナタに、ヒオウは顔をしかめてみせた。

「うん。で、絶対、今みたいにヒオウが嫌がるだろうなとも思って・・・それもあって内緒にしようとさ、思った。」
「・・・。とりあえず、話、してもらうよ?」