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チョコレート
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novelistID. 7958
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好き~伝えない気持ち4~

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今日は久々に早番だったから、ちょっと買い物でも、と思いバイト帰りに街へ寄った。
ぶらぶらしてたら、うちの最寄り駅に着いた頃には、とっくに日も暮れていた。

結構遅くなっちゃったな。

最寄り駅からうちまでは、ちょっと距離があるからバスを使おうか迷ったけど、結局は歩くことにした。

買い物して、お金使っちゃったしなぁ。


歩き出してしばらくした時、一台の車が脇を通り、少し先で止まった。

あれ?あの車って佐藤くんのじゃないかな。…………あ。

助手席のドアが開いて、降りてきたのは轟さんだった。
こちらには気付かず、開いた窓から運転席に声を掛ける。

「今日はどうもありがとう」
「いや。気を付けて帰れよ」
「ええ。…あら、相馬くん!」

!!……気付かれちゃった。

仕方なしに、車に近づく。

運転席から聞こえた声、やっぱり佐藤くん…?

二人で、どこかに出掛けてたのかな。それって、デートってこと?二人って、もうそういう関係?いやいや、もしそうなら佐藤くん見てたら分かるはずだし。それに、轟さんって佐藤くんのこと何とも思ってないよね。…でも、佐藤くん格好いいし。基本的には優しいし。もしかしたら、轟さんも佐藤くんのことを…。

あぁ、どうしよう。何かぐるぐるしてきた。

考えるの中止!


「こんばんは♪佐藤くんも」
「おぅ」
「じゃあ、私はこれで」
「あぁ」
「あ、うん。またバイト先でね!」

優雅に手を振りながら、轟さんは去っていく。

角を曲がって姿が見えなくなっても、佐藤くんの視線は轟さんを追っている。


そうだよね。佐藤くんは轟さんが好きなんだもんね。

……やばい、泣きそうだ。

「相馬」
「!!…な、に?」
「乗れ。送ってやるよ」
「…いいよ、大丈夫。今日は歩いて帰るつもりだったから」
「でも、まだ結構距離あるだろ。いいから乗れよ」
「…うん。じゃあ、お願いします」
「おぉ」

そう言って、運転席から乗り出して、助手席のドアを開けてくれる。

佐藤くんって、いちいち格好いいなぁ。
一つ一つの仕草が、とても様になっている。

惚れた欲目かもしれないけど。


なんて、佐藤くんに惚れ直していたのもつかの間、車に乗ってしまったことを後悔した。
だって、車内に二人きり。
何か話さないと気まずいし、かと言って、僕の頭の中は今、佐藤くんと轟さんのことでいっぱいだ。

どうしようどうしようどうしようどうしようどう

「相馬」
「!!!さ・佐藤くん!今日は轟さんと二人で出掛けてたの!!?」

馬鹿か僕は!!なんて自虐的なこと聞いてんだ!

「は?…ああ。轟が買い物に付き合って欲しいって言うから…」
「それってデートってことじゃないの!?しかも轟さんから誘ってきたなんて!」

あぁ、どうしよう。止まらない。だけど、しゃべってでもいないと泣きそう。

「脈アリじゃん!!よかったね!今度は佐藤くんから誘ってみなよ!
 でもって、告白しちゃうとか!!」


もう、ホントに、馬鹿だ僕。

何で、告白を僕が促してんの。

告白して、轟さんがOKしたら?

でも、そしたら佐藤くんは幸せになれる。

僕なんかといるよりもずっと…


「さ・佐藤くん、もう、ここでいいよ!コンビニで買ってくものがあるの忘れてた!
 ごめん止めて!」

そう言って、強引に車を止めてもらった。

「ありがとう!…ごめんね」
「は?」
「じゃあ、またバイト先で!!」
「あ、おい!お前……!!」

車を降りてすぐ、僕は走り出した。

最後に、佐藤くんがなんて言ったのかは聞き取れなかった。

だって、涙がこぼれ出してしまって、それどころではなかったから。