嘘吐き同士の追いかけっこ
「骸、」
帰って来るのは、沈黙と背中越しからでも分かる寂しさ。
嗚呼、痛い。痛いよむくろ。
(きりり、と胸を締め付けるこれはお前の小さな叫びなんだろう?)
その背中を一心に見つめて、俺はひたすら呼び掛けて、呼び掛けて。
(気づいて欲しい、ねえどうして気づかないんだ俺はここにいるのに)
(その痛みを、分け合う事だって出来るはずなのに)
「むくろ、」
視線の先を追うことも出来ず、触れる事も出来ない。
(もどかしさが、胸に残る)
「ごめん」
小さく、はっきりと告げたその言葉はきちんとお前の耳には届いたかな?
(また、包み込む光を瞳を閉じて拒絶して、全てを閉ざしてはいないだろうか)
(俺はお前に教えてやりたいんだ、世界は拒絶してしまうには勿体無い物なんだって、)
ねえ、
「俺は、ここにいるよ」
(なあ、骸)
「戻ってきてくれよ」
嘘吐き同士の追いかけっこ
(そろそろ潮時だろう?さあ、早く早く)
(終わりを刻むのも、始まりを創るのも、俺はお前とがいいんだから、)
作品名:嘘吐き同士の追いかけっこ 作家名:白柳 庵