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フジサワコト
フジサワコト
novelistID. 8447
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My Sweet Doctor!!!サンプル

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一体これはどういうことなのだ。
ぐるぐると思考が頭の中で回転してしまっていて上手く機能してくれない。こんなことは生まれて初めてだった。
 全身を包んでいる体温の高さに息が詰まってしまって呼吸が覚束ない。明らかに自らのものよりも高いそれに動揺している自分が余りにも明らかすぎて腹立たしい。これまで生きてきた22年間、一度足りとてこんなことは無かった。彼の人生は生来の頭脳と積み重ねてきた弛み無い努力によってきっちりがっしりと支えられていて、これまでほんの僅かですら揺らぐことすらなかったというのに、何もかも思い通りにならないことなど一つだって存在し得なかったというのに。
 それが、こんな。こんなにも簡単に突き崩されるだなんて思ってもみなくて、こんな心臓が飛び跳ねるような奇妙なステップを踏んだり理論だった行動が出来なくなってしまったり自分がする羽目になるだなんて余りにも想像の範疇外過ぎて。

「こ、これは……っ、どういうことですか……っ、先生!!」

 結局、こんな状態で真っ当な判断など下せる筈も無いという結論を下し、今ルルーシュを混乱せしめている当の本人に聞くという行動に移るまでにはたっぷり一分近い時間が掛かってしまった。
 しかし返事はすぐには返ってこない。それどころか己が身に絡められた腕には余計力が籠められて一層抱擁が強くなる。息遣いまで肌で感じることが出来そうなほどに近づいた二個体の距離。家族とだってこんなに近づいたことはあるまいと断言出来るほどの近さに、本能的にかっと顔が熱くなる。

「っ、枢木先生……っ!!」

 堪らず飛び出した声は最早悲鳴にも近い。上擦ってしまう自らのそれを情けなく思いながらもこのまま流されるわけには行かないと自らを叱咤する。一体どうしてこんな事態になっているのか、彼が何を考えているのかをはっきりとしてもらわなければならない。
 どういうことなのですか、そんな含みを持たせて、少し険しくした視線を上げる。相手よりも少しでも優位に立とうとしてのそんな行為はしかし、次に目に入った光景で一瞬にして力を失うこととなった。

「ごめん…………だって、好きになっちゃったんだ……」

 そんな囁きと共に降り注いできたのは今にも蕩けてしまいそうなほど温かな笑顔。持ち前の少し幼く見える顔立ちが一層可愛らしさを助長して、二の句が告げなくなってしまう。

「ごめんね。困るよね……でも、好きなんだ。その……ランペルージ君のことが。」

 戸惑いがちなその言葉。しかし刻むリズムとは裏腹にはっきりと己の意思を告げてくるそれは、混乱しているルルーシュの上に容赦なく降り注ぐ。現実を突きつけるように。容赦なく。
「っ……!!」
 どう、抗えと?ルルーシュだって気付いていた。自らの内に潜んでいる彼への気持ちの正体に。けれどそれは許されざるものだから、男であり、何よりも自らを指導してくれた立場にある彼にそんな想いを抱くなど言語道断だ、そう思っていたからこの2週間見ないフリをしてきたのだ。だというのに、最後。最後の最後になってこんな状態になって、あまつさえ彼もまた自分のことを思ってくれていた、などと。そんな事実を知らされて一体どう抗えというのだろうか。

 言葉が出てこない。喉に空気が詰まってしまっていて音を震わせることの邪魔をする。

 抱き締められている腕が熱い。ルルーシュの細いそれとは異なる、きっちりと鍛え上げられた両腕は決して強く束縛してくることはなく、しかしだからといってルルーシュが逃げることを許しもしない絶妙な力加減だ。強引でこそないけれどはっきりと手の内の青年の意思を確認したいと伝えてくるそれに、しかしどう答えて良いかは分からなくて、ルルーシュは反射的に目を瞑ってしまった。
 スザクの顔が見られなかった。何だか無性に恥ずかしくて、居た堪れなくて。好きだと言ってくれるスザクの言葉に素直に頷けない自分が嫌で、殴ってやりたい気分だった。