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黄昏時、見知らぬ貴方との出会い

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アレから日常は一変して、以前からでは考えられないものになった。
あのくすんだ空を眺めていた日は、もう遠い。
肌を照らしつける、眩しすぎるほどの日差しに目を細めて、アキラは青い空を見上げた。
空がこんな色をしていたなんて、以前のオレは知らなかった。
灰色の空、生きることへの空虚さ、温かみも何もない…家族、廃墟のような街。
それがまるで今は嘘のようで。
空は青く、日差しは暖かく、街は活気にあふれている。
がらりと変わってしまったけれど、それはむしろ嬉しい変化で…、オレは生きてるんだって実感する。

新しくなった世界で、新しくともに進むようになった相手はどちらかというと騒がしいヤツで。
けれどその明るさとにぎやかさは、心地いい。
フラリと突然どこかに行ってしまうその猫のようなところも含めて、"リン"って人間がよく出てて。
屈託のない笑顔は、ときとして毒気を抜かれて仕方がないから。
「…ホント、さすがペスカ・コシカのリーダーだよ」
吐いた吐息は意外に軽くて、口元が緩んでいるのに気がついた。
…リンと一緒にいるようになってから、どうも自分は変わった気がする。
とくにそれはこういう変化で、前は笑うことなんて本当になかったのに。
今はこうして気がつけば、ふと微笑んでいることがある。
夏になって長くなった日を一人でつぶすのには、時間を持て余す。
つとあげていた目線を下すと、アキラは苦笑気味の吐息を吐いて、歩きだした。


涼しくなった風に吹かれて目を覚ませば、すでに日は傾いていた。
もやのかかった頭に緩やかに振って、覚醒を促す。
ゆっくりと立ち上がったアキラはそろそろ始まっているだろう、と目的の場所へ歩き出した。
訪れたのは、以前自分とリンが名を馳せたBl@sterの溜まり場。
アキラは個人戦チャンピオンとして、リンはチーム戦チャンプ「ペスカ・コシカ」の雄猫として。
以前とは形式もルールも変わってしまったが、それでもここはBl@sterだ。
懐かしい場所であることには変わりない。
…喧嘩して、殴りあって勝ち負けを決める。それで済むならその方がいい。
どっちが勝つ、なんてくだらない賭けごとに興じて、一喜一憂できるなら。
あの街から帰ってきた今なら、そう思えた。


始まった試合を眺めながら、ぼんやりとそんなことを思っていると、携帯が鳴った。
これに連絡を入れてくる相手は…一人しかいない。
リンだ。
ディスプレイに表示された短文に、重い息を吐き出した。
『アキラ、空見て』
相変わらずの文面に息をついたとき、軽い衝動と重さがのしかかった。
「…っ!?」
軽く目を見開きながら、驚きを露わにする。
そこにかけられた声は、反対にものすごく暢気なもので。
「アキラー、ホラ見てみてっ!飛行機雲っ!」
「…リン、重い。 それに珍しくもないだろ、飛行機雲なんて」
肩口に流れてきた金髪の髪に向かって、溜め息半分でそう言う。
言葉の直後に苦笑気味の吐息が聞こえて、続けて抗議の声が上がる。

「えー、オレそんなに重くないっしょ?
それにホラ、トシマにいた頃なんかさー飛行機雲なんて見れなかったし」
言葉の途中で声が、懐かしむ色を帯びる。
きっと今振り返ればリンは、あの眼差しを浮かべてるんだろう。
「…前までと同じじゃないんだから、それなりに重い。
飛行機雲も、オレはこの2年で見慣れた」
「なにさそれー! オレは命懸けの対決して、入院してたんだぞ?」
耳元で上がる、あの時と変わらない声。今こうして話せるのは、オレたちが生きてるからだ。
「それこそリンの事情であって、オレの問題じゃないだろ」
「うわ、アキラ冷たーい。 なんだよー、いじけるぞー?」
くすくすと半笑いの声が届いて、金色の髪がさらさらと揺れる。
首に回されたリンの手に自分の手をかけながら、アキラは呟いた。
「……勝手にしろ」



試合終わり、リンは元気よく前方を歩いている。
その弾むように歩く後ろ姿を眺めながら、アキラはゆっくりと口を開いた。
「……リンは、相変わらず空を見るのが好きなんだな」
くるりと振り返ったリンは、瞬時に頷いて見せる。
「うん、変化がわかりやすくて好きだよ、空。 あ、でもアキラのことも変わんないくらい好き!」
突然の発言に溜め息をついて、相変わらずだと苦笑する。
「…だってさ、アキラ気付いてないっしょ? …アキラ、結構表情変わるようになってきてんだよ。
うん、やっぱ無表情もいいけど、そうやって笑ってるアキラのが好きだな」

そう言われて、あぁもうリンといる限り、変化は止められないんだろうと思って…閉口して空を見上げた。